Unanswered morning glowy(Daisuke.S) (ページ9)

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Unanswered morning glowy(Daisuke.S)９ページ9

卵焼き、スプーンでいける？と聞こうとしたAに
佐久間がにやっと笑ってから、かぱっと口を開けた。

「…。」
「……。」
「………。」
「…………。」
「………、あーんする流れだよ今のは絶対！！！」

沈黙の攻防に勝利したのはAで
きゃんきゃんと喚く佐久間を
はいはいと受け流して笑うAに
佐久間が不意に瞳を細めて口を閉ざす。
忘れていた、今の２人の関係を
思い出したのかもしれない。
その表情の急な変化に
ぴたりとAも笑うのを止めた。

佐久間のスープも、Aのお弁当も
気付けば残り僅かになっていた。

「あー、、美味しすぎてあっという間に食べちゃった。」
「お口に合って何よりです。」

敬語に戻ったAに、きゅと少しだけ佐久間が眉間に皺を寄せた。

「Aさんも美味しかった？」
「ん。美味しかったです。」
「楽しかった？」
「…。」
「佐久間さんはね、Aさんと一緒に久し振りにご飯食べれて
　楽しかったよ。すごく。」
「…ん。」
「偶然かもだけど、おにぎりの具が梅だったのも
　俺が卵焼き好きなの覚えててくれたのも、嬉しかった。」
「……。」
「やっぱり好きー、って思う。
　Aさんも、Aさんとご飯食べるのも
　Aさんと居る時間も好き。全部好き。」

スープの残りを食べきって
最後までAのお弁当に残されていた卵焼きを
指でひょいと摘まんで食べてから、佐久間はご馳走様と手を合わせた。

「Aも、そうだったら、もっと嬉しい。」

佐久間は苦しそうに細めた瞳をAに向けて
更に何か言いおうとした口を引き結ぶと、吹っ切るように頭を振った。

さっさと佐久間はスープジャーを包みに戻し
自分のリュックに入れてしまうと、立ち上がって、出口へ向かう。

「佐久間くん、それ」
「俺が口つけちゃったし、今度洗って返すね！
　あんまり遅くまで仕事しちゃだめだよー。」
「ちょっ」
「またね、Aさん。また話そ。」

ばいばーいと、大きく手を振った佐久間が見えなくなると
Aは大きな大きな溜息をついて、額に手を当てて瞑目した。

このぬるま湯は、佐久間の自傷行為にも似た
我慢の上に成り立っているのだということを、忘れてはいけないのに。

きっと佐久間は何か勘づいているのだろう。
先程佐久間が音にしなかった言葉に、自分が気付いているように。

『Aの本心、俺には言えない？』