*18−2* ページ31
四方を石壁に覆われ、明かり取りの窓は随分と高い位置にある其の部屋に、二人は立っていた。
そこは六年前の…今回の、ヨコハマを襲った大事件の始まりの場所。
六年前とは違うのは、そこには怪しげな計器や大型の医療器具も何もない。
そして、研究者であった白髪の青年も居ない、ただの地下室であるという事である。
「因果の部屋へようこそ。中島敦君」
女は少年に見向きもせず、壁に向かってそう告げる。
「…事件は終わってないってどういう事だ」
「ふふ…せっかちになったわね」
女は笑いながらそう言うと、純白のワンピースと白衣を踊らせて漸く少年に向き合った。
「事件は終わってない。何故なら、まだ此処に龍が存在しているから。と言っても、子龍だけどね」
「今度は貴女があいつの代わりに僕を、あの街と人達を苦しめるのか!!」
「そんな事、私にできると思って?無理よ。だからこうして全てを終わらせる為に君を呼んだのだから」
ピシャリと言い放つ女に、少年は戸惑った。
全てを終わらせる為に僕を呼んだ?
どういう事だ??
思考を呼んだのか、女はクスクスと笑うと少年に問い掛けた。
「私はね、一つ理解出来ないことがあるの。聞いていいかしら?」
コテンと、少年より低い頭を傾げてそう言う女に、少年は唾を飲んで肯定を示す。
其れを満足気に見た女は早々に言葉を紡いだ。
「何故君は、迷って、足掻いて、叫んでまでして、あの日あの人を殺したの?私はそれが知りたい。あのまま蒐集品になれば永遠に其の輝きを失わずに済んだのに」
淡々と、まるで其れが当たり前であったと言わんばかりに告げる女に、少年は拳を握り、女と目を合わせてはっきりと言った。
「迷い、足掻き、叫ぶよ」
今なら言える。
何故なら。
あの日の罪を、記憶を受け入れて。
今、僕は此処に立っている。
「だって____僕は生きたかった」
其の言葉に、女はにこやかに微笑むと、静かにゆっくりと語り始めた。
38人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
【文スト】中原中也には色違いの双子の妹が居るらしい。別段彼女に不満は無いが、...
あなた・君を真っ赤にさせたい。【文豪ストレイドッグス】
もっと見る
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
フェミロ - まろりんさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます。只今、番外編&NG集等を作成中です。ご意見頂いた物語も書かせて頂きたいと思います。ありがとうございます。 (2018年4月29日 8時) (レス) id: af47f06155 (このIDを非表示/違反報告)
まろりん - 泣きました( ;∀;)もし番外編の機会があったら死後、彼らの幸せな場面を見てみたいです。フョードルルートも。 (2018年4月14日 0時) (レス) id: 631d19327a (このIDを非表示/違反報告)
フェミロ - Rukaさん» そう言って頂けて嬉しいです。ありがとうございます。頑張ります。 (2018年3月29日 8時) (レス) id: a574a862fc (このIDを非表示/違反報告)
Ruka(プロフ) - すごく感動しました!!!次の作品も頑張ってください!! (2018年3月26日 15時) (レス) id: aecad8101e (このIDを非表示/違反報告)
フェミロ - ご指摘ありがとうございます。外し忘れていましたので直しました。ありがとうございます。 (2018年3月15日 22時) (レス) id: af47f06155 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:フェミロ | 作成日時:2018年3月15日 21時