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*14−1*目覚めるは* ページ24

いつの間にか翡翠色の塗装が剥がれ、三本の爪痕が露わになった頭蓋骨を腕に持たされた女を、フョードルは姫抱きにしてドラコニアを後にしていた。

後にした…と云っても、虚弱な為、まだそんなには離れてはいないが。

未だに気絶している女を、フョードルは一旦立ち止まり大切に抱え直すと、其の腕の中にある髑髏に語りかけた。


「貴方に、僕という初めての友達が出来た記念に、良いことを教えましょう。この霧の中で、何故僕の異能が分離しないか考えなかったのですか?」


答えは、既に出ていた。

足音がゆっくりとこちらに近付く。

床に落ちていた林檎を拾う右手には紅い結晶が。

其の後ろから、フョードルの腕の中に収まる女を引き取ったソレの喉元には紅とも蒼とも言える結晶が輝いていた。

フョードルは女の腕から髑髏を拾い上げ、掲げる。

同じ様に、ソレは拾った林檎を掲げてみせる。

女を引き取ったソレは互いに背中合わせになった一人とソレを静かに見守った。


「僕は罪」

「僕は罰」


同じ声が、ドラコニアに、城に、木霊する。

結末を知る道化師の様に、冷たく嗤い戯け、弄ぶ。


「知っているかい?」


フョードルがくつくつと嗤う。


「罪と罰は仲良しなんだよ」


フョードルと同じ顔のソレは密かに笑む。

其れは彼女も同じ。

僕達とは違う、その関係。

澁澤龍彦という、唯一無二の其の男への利害の一致。


「だから、貴女は自分の異能に殺されなかったのですよ」


其れを知らずに、よくもまぁ彼と共に過ごしていたものだ。

一人とソレは嗤って交互に口遊む。


「境界が消滅する」

「部屋が目覚める」


目線の先の赤い光が球体の中で蜷局を巻く姿に、悪魔の様に甘く呟く。


「終焉の化身、異能を喰らう霧の王」

「熱量そのままに、本能そのままに、暴れ、喰らい、咆えたけりなさい」


暗い紫の瞳が歪み、唇が弧を描く。

やがて霧は紅く染まり、侵食し、蜷局を巻く中心部にソレは生まれた。

架空の存在であったソレは悠々とその姿を現わす。


「これは暴走でも特異点でもない」

「龍こそが、異能が持つ混沌の本来の姿なのです」


ヨコハマ全体を覆い尽くす程の、紅い鱗に、金色の鬣を唸らせる巨大な龍。

轟々と産声を上げるソレに、フョードル以外の誰もが絶句した。

*14−2*→←*13−2*



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フェミロ - まろりんさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます。只今、番外編&NG集等を作成中です。ご意見頂いた物語も書かせて頂きたいと思います。ありがとうございます。 (2018年4月29日 8時) (レス) id: af47f06155 (このIDを非表示/違反報告)
まろりん - 泣きました( ;∀;)もし番外編の機会があったら死後、彼らの幸せな場面を見てみたいです。フョードルルートも。 (2018年4月14日 0時) (レス) id: 631d19327a (このIDを非表示/違反報告)
フェミロ - Rukaさん» そう言って頂けて嬉しいです。ありがとうございます。頑張ります。 (2018年3月29日 8時) (レス) id: a574a862fc (このIDを非表示/違反報告)
Ruka(プロフ) - すごく感動しました!!!次の作品も頑張ってください!! (2018年3月26日 15時) (レス) id: aecad8101e (このIDを非表示/違反報告)
フェミロ - ご指摘ありがとうございます。外し忘れていましたので直しました。ありがとうございます。 (2018年3月15日 22時) (レス) id: af47f06155 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:フェミロ | 作成日時:2018年3月15日 21時

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