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*11−2* ページ19

フョードルが結晶体を太宰に向けて囁いた。


「さあ、まずは貴方のキャンセル能力で、結晶という殻を無効化し、異能をあるべき姿に戻して下さい」

「敦君達が無事だといいが…」


太宰が結晶に触れた瞬間、ソレは溶けて形を失い、踊り、廻って天高く昇って行く。

二つの異能は溶け合い、クルクルと混じり、完全な球体となってその場に止まった。

其れは徐々に辺りの異能結晶体を吸収し始めた。

紅いその球体が、膨大な量の結晶体を喰らい、その大きさを増してゆく。


「これに触れて消せば、全てが終わる」


光を失う事のない、その強い意志を宿した瞳が巨大な異能のエネルギー体を見る。

手を掲げ、太宰が其れに触れるその瞬間。

太宰の腕は、そのエネルギー体に触れる事なく、ゆっくりと地面に向かって落ちていった。

背中から伝わる、熱を帯びた痛みと痺れに太宰は目を見開く。


「云っただろ?」


白髪の、この部屋の主は紅い瞳を楽しそうに歪めてそう言った。


「私の予想を超える者など現れない、と」


鍵を閉めた筈のこの部屋に、何故入ってこられたのか。

背中に突き立てられた果物ナイフは更に奥へと差し込まれる。

太宰は鍵を閉めたフョードルを恐る恐る見る。


「ここで裏切りか…」


太宰は掠れた声で呟く。

フョードルは楽しそうに、無邪気に笑っていた。


「云ったでしょ。余興は多い方が良いと」


貴方が余興ですよ。

冷たい微笑を向けるフョードルに、太宰は苦い顔をする。

苦しげに息をする太宰が床に倒れた。

コツコツと、足音を鳴らして近付いて太宰の顔を覗くのは翡翠色の髑髏を持った蒼い瞳の其の女。


「人を含めた生物というモノは不思議よね。其の命の輝きは永遠ではないのだから」


人の死というモノを、何度も見てきたのだろう。

惜しむ様に、慈しむ様に、儚い命というモノを慈愛を込めて、あの世へと送り出す…そんな雰囲気の女に、太宰は苦笑いを零した。


「君は…死神の使いという皮を被った、女神の様だねぇ…それで、次は、どうする」

「次は無い。目的の異能はもう見つけた」


爛々と、無邪気な笑みを見せる其の男は言った。

最初から私の狙いは君一人だったんだよ、と。

女は、悲しげに瞳を伏せた。

*11−3*→←*11−1*道化は誰か*



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フェミロ - まろりんさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます。只今、番外編&NG集等を作成中です。ご意見頂いた物語も書かせて頂きたいと思います。ありがとうございます。 (2018年4月29日 8時) (レス) id: af47f06155 (このIDを非表示/違反報告)
まろりん - 泣きました( ;∀;)もし番外編の機会があったら死後、彼らの幸せな場面を見てみたいです。フョードルルートも。 (2018年4月14日 0時) (レス) id: 631d19327a (このIDを非表示/違反報告)
フェミロ - Rukaさん» そう言って頂けて嬉しいです。ありがとうございます。頑張ります。 (2018年3月29日 8時) (レス) id: a574a862fc (このIDを非表示/違反報告)
Ruka(プロフ) - すごく感動しました!!!次の作品も頑張ってください!! (2018年3月26日 15時) (レス) id: aecad8101e (このIDを非表示/違反報告)
フェミロ - ご指摘ありがとうございます。外し忘れていましたので直しました。ありがとうございます。 (2018年3月15日 22時) (レス) id: af47f06155 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:フェミロ | 作成日時:2018年3月15日 21時

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