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「…………」
時刻は朝の七時三十四分。誰もいない家、柔らかいベッドで横になり、昨日の事を考えていた。
あの夏祭り──帰ってきたヒバリ君は、人気のない花火のよく見える場所に私を連れていった。空に打ち上がる大輪の花。それを見てはしゃぐ私を見て、彼は一瞬柔らかい表情を浮かべたような気がする……けれど。
『……この間は、気紛れって言ったけど』
彼は、話し始めた。私から話を持ちかけて彼がそれに返すことはあるけれど、彼から話を始めるのは珍しい。何かしら、って彼に相槌をしていることを示す為に私は目を細めた。
『ひとつ、気になる事があるんだ』
そう言って、彼は──トンファーを私目掛けて振りかざしてきた。思い切り。確実に、私の顔を狙って。……嫌だわ、レディの顔を傷つけようとするだなんて。
勿論それは当たらない。何故なら、私はそれを避けられるから。彼がトンファーを振りかざそうとしたら、腕を動かさなきゃいけないでしょ？なら、腕が動いた瞬間に後ずさればいいだけ──
『もう、危ないじゃない。何するのよ』
私はくすくす笑った。彼はこうやって、猫みたいにじゃれてくる時がある。可愛らしいけれど、こんなロマンティックな場面くらい我慢して欲しいわ。
彼は、そんな私を見て、真剣そうに私の目を見つめてきた。純粋な疑問を持つ子供のように、私に問うてきた。
『……君には一切の隙がない』
どんな事があっても、表情も声色も崩さない。……まるで、感情のどこかが抜け落ちたかのように。突然武器を向けられて怒ることも無ければ、傷ついた人を見て悲しむことも無い。彼が言いたいのは、そういう事でしょうね。
……一番気に食わないのは、自分の攻撃がどうやっても当たらないことについてかもしれないけれど。
『いいえ、違うわ。何も考えていないだけ。真剣に物事を考えるのって、疲れるでしょう？』
『…………』
『ヒバリ君、そんなに怪しまないで？私、貴方が好きだから。そんな目で見られるのは悲しいわ』
ちりん、と。
彼に向かって微笑んだ時、髪飾りについた鈴が軽快に鳴った。その鈴は、妙にこの場に鳴り響いて、彼の顰めっ面が花火の光で照らされて。
『私は、普通の女の子なんだから』
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もも(プロフ) - まーぶりんさん» コメントありがとうございます。お褒め頂き光栄です。私自身気に入っていない部分が多い為近々大型修正が入るかと思いますが、それまで今の本作品を楽しんでいただけますと幸いです。 (2021年9月20日 6時) (
レス) id: f920ea46f5 (このIDを非表示/違反報告)
まーぶりん(プロフ) - 初めて読んだ感じの小説で，凄く面白かったです！続き楽しみにしています！更新頑張ってください！！ (2021年9月19日 17時) (レス) id: 045921842f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もも | 作成日時：2021年9月12日 15時
