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この間廊下でぶつかった少年──沢田くんがやっている屋台にもヒバリ君は集金に行った。その近くでうろうろしていると、同じ屋台で働いている爽やかな彼がチョコバナナをオススメしてくれたから、ひとつ買ってみる。うん、美味しいわ。
あっという間に周りに恐怖を与えたヒバリ君は、私を呼んで再び境内の方面へと足を進める。たこ焼きを彼の口に押し込んだり、射的に手を出してみたり。私がはしゃいでいる中後ろの方で黙って腕を組んで待っててくれているヒバリ君は、何と言うか……保護者？
はじめての日本の夏、はじめての夏祭り。私のお守りをしてくれるヒバリ君にこまめに感謝の言葉を述べながら、冷たいラムネをこくりと飲む。
──暫く歩いていると、彼の携帯電話から着信音が鳴る。雑踏の中でも聞こえる並中の校歌に思わず笑いそうになりながらも、電話に出る彼の横顔を見つめた。
「──少し待ってて、無闇に動かないで」
「どうしたの？」
彼は運営テントの中のベンチを指さし、携帯を閉まった。同時にどこから取り出したのか、ちゃき、とトンファーを携えて。
「ひったくり犯の場所が割れたんだ」
「あら、良かったわね」
「うん。集金の手間が省けるよ」
咬み殺し甲斐のある群れを見つけた、とでも言わんばかりに音符が出そうな程上機嫌な彼。大人しく待ってなよ、と最後にもう一度私に釘を刺すと、神社の奥の方へと消えていった。
彼を見送って、腕に提げていた焼きそばのパックを開ける。ぱき、と割った割り箸は不格好だったけれど、箸になんとか慣れきった私にはそんなことは問題じゃなかった。
「……おいしい！」
濃いソースの味、香ばしい肉の匂い、ぷにぷにの麺。頬にあたる風は生暖かくて、心地の良いものでは無いけれど。鼻につく火薬の匂いが何だか夏らしくて。ヒバリ君が戻ってくるまで、私はこの小さなテントの中で夏を満喫するのだった。
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もも(プロフ) - まーぶりんさん» コメントありがとうございます。お褒め頂き光栄です。私自身気に入っていない部分が多い為近々大型修正が入るかと思いますが、それまで今の本作品を楽しんでいただけますと幸いです。 (2021年9月20日 6時) (
レス) id: f920ea46f5 (このIDを非表示/違反報告)
まーぶりん(プロフ) - 初めて読んだ感じの小説で，凄く面白かったです！続き楽しみにしています！更新頑張ってください！！ (2021年9月19日 17時) (レス) id: 045921842f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もも | 作成日時：2021年9月12日 15時
