能力 249 ページ2
.
お祭りのときより幾分も肌寒くなり、早朝独特の雰囲気とにおいを肺いっぱいに吸いこむ。
「よし、今日はこのくらいにしとこうかな」
毎朝日課の山登り。それは大会特訓期間中も勿論欠かさなかった。初めはAと変人コンビの三人だった朝練は次第に人が増えていき、今ではDのメンバーで行くまでになった。
「いよいよだね」
「おれ、楽しみで昨日あんまし眠れませんでしたっ！！」
「分かるよっ！日向ｯ！！」
茂庭が持参の水筒を傾けながら、そう笑う。
日向は今にも走り出しそうにウズウズと体を揺らしながらそう続けた。実を言うとAも遠足の前日テンションで、昨晩はあまり眠れなかった。
「おら、お前ら開会式8時からなんだから、さっさと戦闘服に着替えてこいよ！」
はーいと間延びした返事をしつつ、汗を拭って各自部屋に戻る。
本当なら他のチームのようにお揃いの戦闘服を作りたかったのだが、予算はもちろん降りず、自腹で作るにも費用に人とは思えぬ悲鳴をあげたのはまだ記憶に新しい。
せめてもの抗いで、それぞれ自腹で購入した左腕に結ぶ予定の白い三角巾。試合の時はみなこれを揃えて付けようと話し合いの末決まった。
「影山、ビビんなよ」
「びっ、ビビってません！！」
京谷がそう影山に呼びかける。影山は焦ったような上擦った声で否定するも、強がりだとバレバレだった。この2人の距離もこの2ヶ月で随分と縮まったものだ。
Dの面々が毎日能力をぶっぱなし、話し合い、考えあった場所、旧闘技場から寮へと向かう道中、Aはどこか遠くを見つめながらふと言葉をこぼす。
「楽しみだなぁ」
彼女のその独り言に、Dのメンツは僅かに口角を上げる。
ここにいるみんな、出来ること、やることはやったつもりだ。それで負けるならそれまで、でも負ける気などサラサラなかった。
今日は10月25日。
能力大会当日の早朝であった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 261人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ここ - すごくいい作品でお気に入りです!無理せずに頑張ってください!!!! (4月3日 17時) (
レス) @page1 id: 67c55e4306 (このIDを非表示/違反報告)
ミミミジ - とても大好きです！最新停止になってしまっているのがとても悲しい(´；ω；｀)甘納豆様のペースで頑張ってください！ずっと待ってます！ (3月28日 0時) (レス) id: 293ff49e5f (このIDを非表示/違反報告)
めいじ !!(プロフ) - だいすきです゛‼️；；無理はなさらず主様の続きを心より待ってます‼️🤍 (3月25日 2時) (レス) id: c7f934861d (このIDを非表示/違反報告)
紫雨 - 本当にいい作品って途中から読むのが勿体なくなりますよね！！段々もう直ぐ終わっちゃうっっ！って気持ちになるけどスライドする指が止まらないこの矛盾…続きお待ちしてます😭 (3月6日 13時) (レス) @page4 id: 85a8fef426 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう - めっちゃ楽しみにしてます！！30回ぐらいは読み直すぐらいめっちゃいい作品だと思いました！！！更新頑張ってくだい！！待ってます！！！ (1月26日 2時) (レス) @page4 id: a3a267d18d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
