箱推しなので箱ごと守ろうと思う 参【鬼滅の刃】

佰玖 ページ9

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『……………おや…』




彼岸花の育て方の本を読み終えたちょうどその時、フッと行燈の火が消えた。



夜目が利くまで時間がかかり、ようやく部屋がぼんやりと見えてきたところで月明かりを取り込もうと庭に面した襖を開ける。




『………わぁ、綺麗な月…』




お面を外して見上げれば、澄んだ空気の向こうに三分の二程が欠けた月が浮かんでいた。



穏やかな深夜だなぁ…最近何かと忙しかったからこんなふうにのんびり空を見上げることも中々なかった。





『ん〜……いい風……』





この頃少しずつ暑くなってきてはいるがやはりまだ夜は涼しい。



吹き込んでくる心地よい夜風に身を委ねていると、遠くに人の気配を感じた。


隊士が帰ってきたかと思ったが、屋敷に入ってくる様子はない。





不審に思い、羽織を肩にかけて部屋を去った。







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＿＿＿＿＿








気配を殺して門を開いた。私の姿を見た瞬間、その人影は踵を返して去ろうとする。




『…待ちなさい』


「………っ…！」




すかさずその腕を掴んだ。




『おや…？





獪岳くんじゃないか、こんな所でどうしたんだい？』


獪「…別に……久しぶりだな、A」


『あぁ、久しぶり』




腕を掴んだ手が妙に滑ると思ったら、よく見れば血に濡れている。




『…任務帰りかな？』


獪「あぁ……」


『何か用事があったのかい？』


獪「…いや、近くを通っただけだ」


『それにしては、長くここにいたようだけど』




私の言葉に肩を揺らす獪岳くん。わかりやすい。




『……おいで。風呂の湯はもう抜いてしまったが、手ぬぐいくらいなら貸せる。


今から藤屋敷に行くより、ここで休んだ方がいいよ』




小さく頷いた獪岳くんは、私の後に続いて門をくぐった。






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