カフェオレ男子【昼神幸郎】

１３．小さいという翼 ページ13

その体育館のギャラリーには、一般客用に椅子が用意されていて、私は近くの役員らしき人にそれを勧められ、流されるままに腰を下ろした。


体育館の熱気が思いの外強くて、充てられそうになっていたので助かった。




星海が言うには、インターハイでいきなりユニフォームを貰った１年生は、自分も合わせて３人。


星海と、カフェオレ野郎と、あと２ｍの巨人。



２ｍくんは、高校からバレーを始めたばかりだけれど、この３ヶ月でブロックやスパイクなるものを極め、サーブが入るようになった所で選抜されたとのこと。運動神経の良さがずば抜けていると悔しそうな顔で言っていた。


カフェオレ野郎は中学の時から一緒で、家族もバレー一家のサラブレッド、その時から優秀選手に選ばれるほどの実力者らしい。なんか凄くムカつく。



星海はどんな感じなの？と聞いたら、彼は言った。




まぁ見とけ、と。





現在は３分間の公式練習との事で、今まで１つのコートを半分に分けて練習していたものを、その時だけは１コートまるまる使えるとのこと。



よくできてるなぁ、と考えているうちに鴎台の公式練習となった。




開始の笛が鳴った瞬間、星海と目が合った。



一瞬で逸らされたけど、それでもわかる。




見とけよ、と言われている気がした。




その時、星海が高く跳んだ。




私の周りにいる、相手チームの応援団が驚きに口を開けている。



そしてネットの遥か上から打ち込まれる、強い強いスパイク。




私は思わず、パチパチと拍手をしてしまった。


大きな音ではないけれど、それは確実に彼に届いたようで。





「！！！」





ノールックで、背をこちらに向けて、高く高く拳を突き出した。


小さな背中なのに、大きく見える


私が今は見下ろしているのに、それでも何故か小さく見えない身体。




そうだね。星海。いつも君が言ってることわかるよ。




君は、小さいのに凄いんじゃなくて、ただ凄いのだと。





でもね、私思うんだ。




小さいからこそ、君は誰よりも輝いているし、小さいことこそ、君を羽ばたかせる翼になっている。




まぁ、これ本人に言ったら怒られそうだけど。





ただただ星海に圧倒された、３分間公式練習。




そんな私を、不満そうにチラ見する視線に、私は今度も気付かなかった。

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