この世界の誰よりも何よりも…。 ページ14
「A。好きだよ」
甘い微笑みと共に凛月は優しくそう口にした。
彼の私に対する好きの意味なんて充分伝わっていて、だからこそ胸が締め付けられるように苦く痛む。
なんの前触れもない、バッタリ鉢合わせたご近所の凛月に告白されることは日常であり、けれど、真緒に振られた今の私にとって、その好きという言葉を貰えることがどれ程価値のあるものかきっと凛月は知らないのだろう。
『凛月。そんな簡単に好きって言っちゃダメだよ』
「どうして?」
『どうしてって……。大切な時に言わなきゃ』
「大切だよ。俺にとって、Aと一緒の時間は全部大切」
黒いシャツに白いジーパンというラフな格好の凛月は、コンビニに行っていたらしく、片手に店名の入った袋を手にしていた。
そんなコンビニ帰りにばったり会った私と凛月の会話の内容が告白だなんて誰が想像出来る?
私だってコンビニに行くだけだからと、パーカーにジーンズという適当な格好だったし、メイクだってしてないし、髪だってちゃんとしてない。
時刻は19時前ぐらい、街頭の少ない住宅街で、いつご近所さんが通るかわからない中での告白。
……なのに、今まで凛月に言われた中で一番胸に響く告白だった。
それはきっと、私が失恋したばかりだから。
そうわかっていても、ドキドキはおさまらず、私はきちんと凛月の顔が見れなくて少し目を逸らした。
「それに、俺がAに言う好きはいつだって特別だよ。知ってるでしょ?」
凛月はそう言って私の頬に触れた。
思わず目を合わせてしまうと、赤い瞳に囚われてしまったかのように目が逸らせなくなる。
『……凛月はつらくないの?なんで答えがわかってて、私に好きって言えるの…?』
「── そんなの関係ないよ」
『えっ?』
凛月の手が頬から私の唇に移動し、人差し指でちょこんと触れて離れ、その人差し指で自身の唇に触れた。
「そんな簡単に変わる程、俺の気持ちは弱くない。この世界で俺が一番Aのこと好きだから」
一瞬の迷いも不安も滲ませず、真っ直ぐに放たれた凛月の言葉。
『凛月は、いつから私の事好きなの…』
「ずっとだよ。俺はAのことが好きで、全部欲しくて堪らない。こんな気持ちになるの、Aにだけだよ」
凛月の真っ直ぐで、だけど、重めの気持ちに私は押し潰されそうになる。
けれど、私も大抵諦めが悪い。
失恋して尚、私は3人で居ることを諦めきれないのだ。
『ねぇ、凛月 ──』
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安城(プロフ) - 恋乃さん» コメントありがとうございます!無理のない範囲で更新頑張りますので、またお暇な時にでも読みに来てやってくださると嬉しいですー! (2021年3月27日 19時) (レス) id: 6990b31a24 (このIDを非表示/違反報告)
恋乃 - この作品物凄く好きです凛月がどうやって付き合うのか気になります無理せずに頑張って下さい応援しています (2021年3月26日 23時) (レス) id: 0410a23887 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:安城 | 作成日時:2021年3月23日 19時