二十八話 ページ28
何だかんだありながらも何とか零さんが仕事を終わらせるまでに作戦を立て終わり、とっととこの地獄から脱出しようと席を立つと、景光さんに笑顔で「どこ行くの?」とガッと腕を掴まれた。
「……家ですけど…」
「安室の仕事が終わるまで居ようぜ。な、良いだろ?」
子犬の様な顔で見上げて来る景光さん。
私がその顔に弱い事を知っていてやってるなこれは。
ぐぬ…とおかしな声を出しながらも鞄を離すまいと握っていたら、お兄さんがやれやれと席を立ち、あっという間に鞄を持って背中に隠してしまった。
航さんを懇願する様に見るが諦めろと言わんばかりに苦笑して首を振った。
私は致し方なく諦めて元の席に座る。
研二さんが「好きな物奢るから我慢してね〜」とメニューを渡してきた。お菓子で釣られる子供やないがやけんね私は。
「今なら夕飯安室が好物作ってくれる様に交渉するよ」
「我慢します」
ギラリとした視線が刺さるが、背に腹は変えられない。零さんのご飯は美味しいんだから。
特に頭を使って疲れた日に零さんのご飯を食べると元気が出る。魔法みたいだ。
普段はお兄さんたちがやたらと零さんご飯で釣ってくるから少しの反抗心があって行かなかったけど、本当はかなりうずうずしていた。
これ絶対言えんけど。
「そういう訳だから安室、今日は松田の家な!食材は先に買っておくから。コイツの金で」
「え、俺の金なの?!」
「僕が作るのは構いませんけど…柚が『透お兄さんのご飯食べたいな』って言ってくれるなら」
「それどんな羞恥プレイですか?」
これ絶対揶揄われてる、と思いながらも頬を引き攣らせ小さく言う。
「とっ…透お兄さんのご飯食べたいなぁ」
「うん、一緒に作ろうか」
「おっとろっしゃ。私明日死んじょうかもしれません」
きっと今頃私の本名は特定されているんだろう。炎上必須だ。SNS必要最低限の人としか交換してなくて良かった。
七年前からこの人たちと一緒に居るとトラブルが起きたりしたからネットは怖いとも聞いていたし十分に気を付けていたのだ。
「まぁまぁ。俺たち警察官だし何かあったら相談しなよ!弁護士の知り合いも居るしさ!」
研二さんの言葉に、ちらりと上を見るお兄さん。
蘭ちゃんのお母さんの英理さんの事だろう。別居中で今は家に居ないと聞くが、英理さんは負け無しの敏腕弁護士だ。生徒のトラブルに付き合う程暇じゃないと思うが。
「つか今の方言初めてじゃね」
「おっとろっしゃな」
「勘弁して…」
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トマトまと(プロフ) - 完結おめでとうございます!!方言聞いて癒されてる降谷さんと諸伏さんとても面白かったですww警察学校組の過保護な感じめっっっちゃ好きです!!!!!!!素晴らしい作品を読ませていただき、ありがとうございました! (2022年2月18日 20時) (レス) @page38 id: 1d9d2ab89b (このIDを非表示/違反報告)
さしみ(プロフ) - あんこさんのお話私好きです!またいろいろ読みに来させて頂きます♪ (2021年1月8日 11時) (レス) id: 52bb9638d4 (このIDを非表示/違反報告)
レモン(プロフ) - はじめまして、警察学校組好きなのでたくさん登場していて、うれしいです。(*≧∀≦*)夢主ちゃんの方言もかわいいです!(*´ω`*)続き楽しみに待ってます(*≧∀≦*) (2018年9月30日 23時) (レス) id: e66d7d83c8 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ(プロフ) - 桜さん» 初恋の人話題にはまたいつか出るので楽しみにしてて下さいー!笑 (2018年8月25日 11時) (レス) id: 6e1ddb073f (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - 誰なんだ??初恋の人って? 続き頑張って下さい! (2018年8月24日 19時) (レス) id: ae3d71bb82 (このIDを非表示/違反報告)
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