扱い酷くないですか皆さん【文豪ストレイドッグス】

ツンデレ31 ページ31

静かな見詰め合いが続く。

太宰君の瞳からは、後悔とか達成感とか切なさとかやるせないものを感じた。

その中に、私の顔が映っている。

何て不細工なんだろう。

お酒を片手に、お世辞にも綺麗とは云えない顔をしている。

こんな綺麗な人の目に映してはいけない。

私は目を逸らした。

「柚」

「なに？」

「不細工だね」

「…云われなくても知ってるよ」

缶の最後の一口を飲み干した。

空になったお酒の缶。

髪や頬を撫でる風。

街を照らすネオン。

私はこの街が好きになったから、故郷から出てきた。

不安な一人暮らしをして、都会の喧騒の中で生きている。

武装探偵社に入社して未だ一年も過ぎていないのに社員の一部には貶されたりパシられたりする毎日。

私が不細工なのは知っている。

「でもね、柚」

「ん？」

「君のその心は本当に、心の底から綺麗だと思うよ」

太宰君が笑った。

歳相応に。

私と同い年の男の笑顔。

不覚にも照れてしまったのは、お酒の所為にしておこう。

「太宰君だけじゃ無いけど、皆結局私の事が嫌いなのか好きなのか判らない」

「如何なのだろうねぇ」

「最初はあんな事云われなかったから本当は物凄く寂しかった。こんな会社辞めてやるって何度も思ったよ。でも、まいえんじぇる居るし辞めれなかった」

呆れた様な目をされた。

まいえんじぇるは捨てられないでしょう。

「私、武装探偵社を選んで良かったと思ってる」

じゃなきゃ、太宰君とも会えなかったしね。

笑って云えば、口許を押さえて外方を向いてしまった。

あくちゃんポーズだとけらけら笑えば怒られた。

そうだ二人は師弟だった。

その後、また少し話して、私は帰る事にした。

明日寝坊したら大変だから。

「お休み太宰君」

「送るよ。この時間帯になると酔っ払った破落戸が増えるから」

「あ、一応女として見て呉れてるんだ」

「早く行こうか。家は何処？」

「無視かよ。此方」

何だかんだして、送って貰った。

マンションの前で改めて礼を云う。

「お安い御用だよ。まぁ一つ貸しね」

「はいはい。お菓子で良い？」

「そうだなぁ……今日は此で良いよ」

そう云って私の手を取り甲に接吻された。

顔が赤くなるのが判る。

「じゃあね」



「………………顔あっつ」







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「腕への接吻は恋慕、なんて知らないだろうなぁ」

偶には勇気を出すのも良いものだ。

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