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陸ノ咄 ページ6

「此方ですわ」

連れて来られたのは、川をのぞめる場所。
初めて来る所だった。

「?何故こんな所に僕を…」

「貴方とこの景色を分かち合いたかったのですわ!兄様と二人きりの世界で見た、この景色を」

「だから何故僕に」

「貴方を信頼したからです」

きっぱりと云われ、僕は思わず後ずさる。
谷崎さんは僕に顔を近付け、微笑んだ。

「……近いです」

女性として、もう少し恥じらいをお持ち下さい。
そう云ったら、何故かむくれられた。

「本当に男性ですの、貴方」

「何がですか?!」

「女性にこう遣られたら大抵の男は落ちるから、探偵社に入れたいならこうしろと太宰さんに」

「あの人は次会ったらぶん殴りますね」

僕はちゃんと男ですよ、と答え景色を見た。
谷崎さんが僕をじっと見詰める。

「………未だ何か?谷崎さん」
「やめて下さい」
「?」

「谷崎さん、と呼ばないで欲しいのですわ」

はて、他にどんな呼び方があっただろうかと考える。

……無いな。

「…ナオミ、と呼んで下さい」

「ナオミさん?」

「呼び捨てが良いです」

益々判らない。
あのクラスの誰にもナオミと呼ばせた事の無い彼女が如何いう心変わりだろうか。

「私は、信頼に足る人物だと判断した人にのみ、ナオミと呼んで頂いておりますの」

「つまり、僕が信頼に足る人物だと?」

「ええ!」

朗らかに笑う彼女に取り敢えず礼を云い、僕達は帰路に付いた。

「有難う御座いました」

「此方こそ。では」

「探偵社の件、前向きに考えて下さいまし。…楽しい所なのです」

「……判っています」

彼女の言動、昨日のやり取りを見ても、仕事以外では至って平和だと判っている。
だがもし。
もしもマフィアと関わる事になったら将来僕は如何なるのだろうか。

働き先が見付からなくなりそうだという不安が一番だ。

そうしたら生きていけないから。

「…嗚呼もう!こんな自分中心の考えじゃあどちらにしろ働き口なんか見付からない!……取り敢えず行かないと」

僕は、探偵社に背を向けた。

「叔父さん居るかなぁ…」

そして僕は何となく、夜のヨコハマを駆けた。

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作品ジャンル:アニメ
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蛍(kei)(プロフ) - あんこさん» 深夜テンションの塊だなぁとは思ったけど突っ込まないでおく((( (2017年2月25日 12時) (レス) id: a4aa4c4dc7 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ(プロフ) - 蛍(kei)さん» いえー!ありがとー!!夢主君のドレスに突っ込まないでくれてありがとう深夜テンションでこれ殆ど書いたんだ← (2017年2月25日 9時) (レス) id: dcde93e978 (このIDを非表示/違反報告)
蛍(kei)(プロフ) - どもどもー、零御だぜ!やばいナオミちゃん可愛い……(( (2017年2月25日 0時) (レス) id: a4aa4c4dc7 (このIDを非表示/違反報告)
リズ - この作品面白いですね! (2016年11月13日 23時) (レス) id: 9929c522bf (このIDを非表示/違反報告)
蒼月(プロフ) - あんこ様、太宰さんとの絡みを書いて頂き、ありがとうございました!最高に面白かったです!!これからも頑張って下さい! (2016年10月28日 19時) (レス) id: 3767d3feec (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あんこ | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2016年10月8日 18時

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