参拾肆ノ咄 ページ34
旧晚香堂にて、先程帰り道に云われた事をもう一度聞く。
そう云えば僕は、危険な為家には帰って居ない。
両親には近況報告はするもののなるべく寝泊りする場所は漏らさない方が良いとの事で、元気だという旨だけを伝えている。
「三組織異能力戦争だ───!」
考え事を一旦辞め、僕は福沢さんを見る。
その顔からは、探偵社を守るという固い意志が見て取れた。
精一杯、役に立つんだ───
僕は力一杯に手を握り締めた。
「怜さん」
「如何しました?ナオミ」
「…私の分も、兄様や、探偵社の皆様を助けて下さいまし」
ぎゅっ、と手を握られる。
願いを込める様に、ゆっくりと握った手を彼女は自身の額に付けた。
「ナオミ…」
「貴方も、必ず皆さんが守って下さいますわ。どうか無事に、探偵社が勝ち残れますよう。私の分も頑張って下さいまし」
小さくて柔らかくて暖かい手に包まれて、僕は照れ乍もコクリと頷いた。
「確と、承りました」
────まるで姫と騎士。
制服なのだけれども、そう連想させる様な美しいものがあった。
故に、其処に居た調査員皆が2人に見惚れたのである。
「…お願い致します」
もう一度ぎゅう、と先程よりも強く、強く手を握り額から離した。
その後の2人の顔は何処か晴れやかで。
「明日こそは学校で名前呼んで下さいましね」
「げっ、未だ諦めて無かったんですか?!」
「うふふっ、当たり前じゃないですか!貴方が狼狽える姿を見たいですもの」
「な、ナオミ…!あんまり怜君を困らせちゃ駄目だよ…」
「あら兄様、口応え?」
2人が戯れ始めたので僕は国木田さんの方へ向かい、此からの予定を詳しく聞いた。
「厭ぁ、中々格好良かったねェ、怜君?」
「何がですか?」
「うふふっ」
楽しそうに笑う太宰さん。
「守りたいものがあるのは、良い事さ」
───でも。
『多過ぎては守れないよ』
耳元でそう囁かれる。
僕はゾクリと背筋が冷えた。
そう云った時の太宰さんの瞳が、何者にも喩えられない程に暗く、冷めていたから。
僕は、何も云えなかった。
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蛍(kei)(プロフ) - あんこさん» 深夜テンションの塊だなぁとは思ったけど突っ込まないでおく((( (2017年2月25日 12時) (レス) id: a4aa4c4dc7 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ(プロフ) - 蛍(kei)さん» いえー!ありがとー!!夢主君のドレスに突っ込まないでくれてありがとう深夜テンションでこれ殆ど書いたんだ← (2017年2月25日 9時) (レス) id: dcde93e978 (このIDを非表示/違反報告)
蛍(kei)(プロフ) - どもどもー、零御だぜ!やばいナオミちゃん可愛い……(( (2017年2月25日 0時) (レス) id: a4aa4c4dc7 (このIDを非表示/違反報告)
リズ - この作品面白いですね! (2016年11月13日 23時) (レス) id: 9929c522bf (このIDを非表示/違反報告)
蒼月(プロフ) - あんこ様、太宰さんとの絡みを書いて頂き、ありがとうございました!最高に面白かったです!!これからも頑張って下さい! (2016年10月28日 19時) (レス) id: 3767d3feec (このIDを非表示/違反報告)
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