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見やすい場所に置かれているサッカーボールを模した金のトロフィーを眺めながらラーメンを堪能していると、空っぽになった皿を土門が出した。
｢監督!俺、餃子もう一皿！｣
｢私も追加をお願いするわ｣
｢悪いな、あと一人前しか残ってない｣
｢それじゃ、夏未ちゃんどうぞ｣
｢……夏未、ちゃん？｣
丁寧に呼ばれることに慣れているらしいお嬢様は、土門からの呼ばれ方に疑問符をつける。視線を向けられた彼は滝のような汗を流した。
｢いや、その、つい……｣
｢悪くないわね、その呼び方｣
どうやらお気に召したようだ。一瞬だけ張り詰めた空気が緩む。笑いの輪が皆に広がり、土門は息をついた。
｢だけど、理事長代理としての私への敬意は忘れないでいただきたいわ。私の言葉は、理事長の言葉よ｣
｢それじゃあ、理事長ならどんな言葉をこいつらに送るかね｣
響木の言葉を受け、夏未が迷いなく立ち上がる。
｢今やサッカー部は、雷門中の名誉を背負っていると言えるわ。必ず全国制覇を成し遂げて頂戴！｣
｢おう、やってやるぜ！ な？｣
円堂が豪炎寺の方を向き、彼は親指を立てて応えた。
一人一人の顔を見渡しながら紡いだ夏未の理事長代理らしい科白に、皆は真剣な表情で耳を傾けしっかりと頷いている。フットボールフロンティア開催前とは、偉い違いだ。誰もがサッカーに真剣に向き合い、仲間と共に歩み、高みを目指している。だからこそ、彼らのサッカーは輝いて見えるのだろう。
｢よーし、やろうぜ！ 絶対に、全国制覇ー！｣
｢｢絶対に、全国制覇ー！！｣｣
完璧に息のあった気合いに、笑い上戸のAはいつも通り頬を緩ませた。
眩いほどの笑顔を浮かべる仲間たち。彼らを一番そばで見守れる今を、脅かされたくはない。しかし、段々と近づいているような気配すらある
(面倒だなぁ)
したいことだけをして、見たいものだけを見て生きてきた。そんな平坦で穏やかな道とも、そろそろお別れをしなければならないようだ。今のうちから、覚悟を決めておかなければ。Aには、守るべきものがたくさんあるのだから。
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作者名：おひめ | 作成日時：2022年9月24日 12時
