陽月の巫女は運命と踊る

１４ノ唄「残念な用心棒」 ページ16

鮮やかな橙色の夕日が
少し沈みかけている時間だったから
ポケモンセンターに行こうとした。
その道中でハウ君と、リーリエにどこか似ている、
多分私と同い年くらいの男の子が
バトルをしている所を見かけた。
「あははーやられちゃったー！！」
どうやらハウ君は負けたみたいだった。
その代わり男の子の方が勝った…みたいだけど、
何だか怒っているような様子が遠目でも分かる。
「お前…本気でそれか……？」
「そうだよー！本気でー！
　ポケモン勝負楽しんでるよー」
…口出ししないけど、いや出来ないけど。
ハウ君、その人に対してその発言は
火に油を注ぐ事にしかならないよ。
「……フッ、楽しむか……
　持てる力を勝負で出し尽くしてから言うんだな」
(ほら、怒っちゃったよ。
やっぱり火に油を注いだような…)
まあ自分から首を突っ込まない限り、
この二人の話には関わりはしないけど。
それにポケモンセンターに早く行かないと、
部屋が空いていないなんて事ある可能性があるし。
その場から回り道しようとしていた時、
「わー！アイ、この人怖いよー！」
運悪くハウ君に見つかってしまった。
火の粉が私に降りかかってきちゃった…
これはやるしか無いのかな…
「アイ……？」
男の子が私の方を向いた。
何だろう、ジロジロ見られている気がする…
私はあの狂ったストーカーの所為で、
見られている事に対してあまりにも慣れていない。
…その所為で盛大にSAN値が
ガリガリ削れた覚えがあったけど。
流石に私は知らない人だけど、
失礼を承知の上で“誰？”としか書けなかった。
「ほう……警戒してるのか。
　そういうの、キライじゃない……」
いや警戒はしていないけど。
そもそも、警戒するべき相手が違う。
って言いたいけど今は口にしない。
「俺はグラジオ。
　相棒のヌルを鍛える為、戦い続けている！」
へぇ、この人はグラジオっていう名前なんだ。
リーリエの名前はきっと百合の花が由来だね。
この人の名前の由来は多分だけど
グラジオラスからきているの、かなぁ…
…どうでもいい事を考えてた。
「ま……今はスカル団の雇われ用心棒だがな」
グラジオは続けてそうも言った。
あぁ、あのバカル団の用心棒ねぇ…
グラジオ、残念な人達に雇われたね…
私はしたくも無い同情を
相手にせざるを得なかった。
「アイ。何も言わず、俺達の相手しな」
そう言ったグラジオがバトルを仕掛けて来たので、
私も無言でボールを構えてスタンバイした。

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