4 ※Side 風見※ ページ4
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空港から程近いパーキングに停めた白い車と共に
主が帰るのを静かに待っていると
スマートフォンの画面がその上司からの着信を告げた。
ワンコールと待たずに応答すれば
少しの間の後で、スピーカーからよく通る声が聞こえる。
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『無理を言ってすまなかったな』
「いえ」
『助かった』
「お役に立てたのであればよかったです」
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今回の搭乗ゲート内への立ち入りに関しては
詳細は割愛するが...俺も一役、買っている。
滅多にない降谷さんの頼みなのだから当然だろう。
いつもの指示とは違った、個人的な頼み。
あの人をそうさせるだけの何かがあったに違いない。
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「大切な人のお見送りですか?」
『.........風見』
「あ...申し訳ありません。不粋なことを言いました」
『...いや。まあ、そんなところだ」
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短く答えた降谷さんは
電話口でふっと微笑んでいるようだった。
少し歩きたい気分だからと
目の前まで迎えに行くという俺の申し出を断って
それでも切れない通話に、あの...と声をかける。
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『最初から見送るつもりだった』
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降谷さんの《大切な人》のことだろう。
俺も見送りだと聞いていたし、疑うはずもない。
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『けど一瞬でも...本当に彼女が選べばいいと考えたと言ったら、君は笑うか』
「...笑いませんよ。驚くだけです」
『まあ杞憂だったがな...一丁前に覚悟決めたって顔してたよ』
「よかったじゃないですか」
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ウィンドウを開けたその向こう。
鉄の塊が灰色の空に向けて飛び立って行く。
この人のことだから、もちろんここまで想定内のはずだろうに。
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『風見』
「はい」
『一瞬、迎えに来たって言って抱きしめてもいいと思ったかもしれないな』
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それでも、何かと人間離れしている上司の
自分の感情まで読みきれなかった人間らしさに
ふっと笑みが零れた。
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『驚いていないし、笑ってるじゃないか』
「ふ...すみません」
『気が変わった。迎えに来い』
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承知しました、の返事にぷつりと切れた通話。
俺はその指示に従うため
上司の愛車のハンドルを握った。
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名無し98724号(プロフ) - 本当にキュンときました…素敵な小説すぎて一気読みしました。他のお話もですが、書き方がとってもお上手で尊敬しております!少しお聞きしたいのですが、BTという小説を読まれたことはございますか…?(急に失礼ですよね、すみません)素敵なお話ありがとうございました! (2020年3月29日 3時) (レス) id: f858c9eb21 (このIDを非表示/違反報告)
ももこ(プロフ) - さちさん» さちさん、ありがとうございます!新作も引き続きよろしくお願いします! (2019年1月31日 11時) (レス) id: 12dd65b537 (このIDを非表示/違反報告)
さち - 初めから最後まで一気に読んでしまいました。素敵でした。新作も楽しみです。よろしくお願いします。 (2019年1月31日 9時) (レス) id: ae1bab64f5 (このIDを非表示/違反報告)
ももこ(プロフ) - 深月さん» 深月さん、ありがとうございます!私自身、無事に完結してホッとしています笑 (2019年1月28日 16時) (レス) id: 12dd65b537 (このIDを非表示/違反報告)
深月(プロフ) - すごく素敵なお話でした…!大好きです! (2019年1月26日 13時) (レス) id: a93ea5789b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ももこ | 作成日時:2018年12月27日 15時