45.公安の刑事恋物語 意地張りのセービング ページ10
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店内へと促す安室透の腕を咄嗟に掴んで叫んだら
そんな私を見て、降谷零はそっと後ろ手で扉を閉めた。
ハッと我に返って青ざめる。
潜入先に乗り込んだ上に、本名を呼んでしまった。
ありえない失態だ。
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「す、すみませんっ」
「用件を言え」
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腕を組んで淡々と言う降谷さんに、全身から汗が吹き出す。
そして黙り込んで俯く私に近付いて
顎を掴んで強引に目線を合わせた。
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「早く言え。お前がこんな行動を起こさざるを得ない緊急事態じゃないのか」
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怒鳴ったわけでもないのに重みのある声が心を落ち着かせる。
私は、山下さんが人質として捕らわれてしまったことを話す。
降谷さんは身に付けていたエプロンを素早く外した。
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「タクシー拾ってろ!すぐ現場に向かう!」
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そう言い残して喫茶店に入って行ったら
私がタクシーを止めるのと同時に電話をかけながら出てくる。
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「今すぐ指揮権を自分に移します、そちらに待機させている全員を現場に出動させて下さい」
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それだけ言って電話を切った。
現場に向かう車内で、いたたまれない気持ちになる。
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「降谷さん、すみません、私...」
「構わない。こっちこそ悪いな、指揮を取れず」
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外を眺めながら言う降谷さんに、呆気に取られる。
失態を犯した私を責めるどころか
自分に非があると謝罪したのだ。
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「あの、降谷さん...全員出動させるってことは、強行突破ですか?」
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その言葉に、外に向けていた視線を私に移す。
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「そんなわけないだろ、強行突破なんてしたら山下はどうなるんだ。
山下を無事に取り返すためには戦力が必要だろ、だからだよ」
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私は自分の耳を疑った。
この男なら決して見捨てない、そう思ったのは事実。
だけど、本当に助けてくれるとは思わなかった。
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「でも...山下さんを取り返して犯人確保というのは、労力が大きくなるから強行突破するなって指揮官が...」
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声が震えているのが私自身、分かりすぎるくらいだった。
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「仲間を守るために使わずして、俺達は何のために日々訓練してるんだ」
「え...」
「自分の大切なものも守れないやつに、この国が守れるわけないだろ」
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未桜 - 本当大好きですこれドタイプです……。テーマ一本釣りされて参りました。ストーリーも自然だし、キャラクターの魅力がとても引き出されていました! トリップした事に現実味のある主人公へかなり感情移入してしまいました。本当に素敵な作品をありがとうございました! (2021年12月22日 0時) (レス) @page36 id: 22cb640d25 (このIDを非表示/違反報告)
キャラメル(プロフ) - 最っ高です!!!大好きな作品の1つになりました!これからも頑張ってくださいね(^^♪応援してます! (2020年6月8日 15時) (レス) id: b8ac5a9a04 (このIDを非表示/違反報告)
美咲(プロフ) - 最高… (2019年12月14日 17時) (レス) id: f6fdf86c66 (このIDを非表示/違反報告)
神と名乗る凡人 - 最高ですね!これで読むの2回目のなるんですが何回読んでも感動します。上から出申し訳ないんですが、書き方も本当にプロで出せるような文章ですごく引き込まれました。これからも頑張ってください!応援してます。ありがとうございました!! (2019年8月31日 2時) (レス) id: 5e8845cf1b (このIDを非表示/違反報告)
華蓮(プロフ) - 感動しました!!降谷零という人物が更に好きになりました!!話を読んでいて、表現の仕方?がすごく好きです、読んでいて面白かったし、キュンキュンしました!!これからも頑張って下さい!! (2019年4月30日 1時) (レス) id: 28b0b44997 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ももこ | 作成日時:2019年3月8日 16時