46.公安の刑事恋物語15 右手の小指 ページ11
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「それと、お前らの指揮官は俺だ、俺が指揮官である限り絶対にお前らを犠牲になんてしない」
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それだけ言って、スマホにある現場の見取り図を見る。
私はただその横顔に頭を下げることしか出来なかった。
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その後の降谷さんはもう、すごかった。
的確に指示を出し、先陣を切って最前線で闘うもんだから
その指揮官としてあるまじき行動に
風見さんを見れば、やっぱり頭を抱えていた。
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「ああもう、降谷さん!後ろに下がってください、危険ですから後方で...」
「危険だからこそだろ、そんなところにお前らだけを放り込めるか。
お前らがいて初めて俺の立場は成り立ってるんだ、分かったらくだらないこと言ってないで集中しろ」
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そう言って前を走るその背中に、風見さんがハッとした。
この上司はどこまで行っても眩しい。
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山下さんは、殴られた傷はあったけど命に別状なし。
組織の人間も全員残らず確保された。
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「山下、すまない」
「そんな、自分のミスですからっ......助けに来て下さってありがとうございます」
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そう涙を溜める山下さんに、降谷さんは安心したようだった。
それから私の方を振り返って...微笑んだ。
よく知らせてくれた、と。
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「自分を、仲間を簡単に危険に晒す作戦を命じる指揮官に従うことはない。
絶対に自分の、仲間の命を諦めるな」
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本来は誰が指揮官であっても従うのが優秀な警察官だ。
今日の私みたいな行動をする部下なんて
降谷さんの評価が下がることはあっても上がることはない。
それでも、そう言い切る降谷さんは、誰より指揮官らしい。
だからこの人になら...自分の、仲間の命を預けられるんだ。
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「...あの。降谷さんにも、お願いがあります」
「...聞ける範囲でなら」
「降谷さんも、自分を大切にしてください」
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その場にいる全員が頷いた。
風見さんなんて首がちぎれるんじゃないかってくらい。
降谷さん一人だけが目を丸くしていたけど
その後で、少し照れくさそうに視線を彷徨わせて
人差し指で頬を掻いたら、諦めたように笑った。
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「......ああ、わかった、約束しよう」
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右手の小指を差し出したら
まいったな...一言そう漏らして
同じ指を絡めて、私達は笑い合った。
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未桜 - 本当大好きですこれドタイプです……。テーマ一本釣りされて参りました。ストーリーも自然だし、キャラクターの魅力がとても引き出されていました! トリップした事に現実味のある主人公へかなり感情移入してしまいました。本当に素敵な作品をありがとうございました! (2021年12月22日 0時) (レス) @page36 id: 22cb640d25 (このIDを非表示/違反報告)
キャラメル(プロフ) - 最っ高です!!!大好きな作品の1つになりました!これからも頑張ってくださいね(^^♪応援してます! (2020年6月8日 15時) (レス) id: b8ac5a9a04 (このIDを非表示/違反報告)
美咲(プロフ) - 最高… (2019年12月14日 17時) (レス) id: f6fdf86c66 (このIDを非表示/違反報告)
神と名乗る凡人 - 最高ですね!これで読むの2回目のなるんですが何回読んでも感動します。上から出申し訳ないんですが、書き方も本当にプロで出せるような文章ですごく引き込まれました。これからも頑張ってください!応援してます。ありがとうございました!! (2019年8月31日 2時) (レス) id: 5e8845cf1b (このIDを非表示/違反報告)
華蓮(プロフ) - 感動しました!!降谷零という人物が更に好きになりました!!話を読んでいて、表現の仕方?がすごく好きです、読んでいて面白かったし、キュンキュンしました!!これからも頑張って下さい!! (2019年4月30日 1時) (レス) id: 28b0b44997 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ももこ | 作成日時:2019年3月8日 16時