【歌い手】この恋は甘く、苦い【合作】【短編集】

あまいあまーいちょこれーと/まふまふ/かのこゆり ページ7

こちらは、「166時間のがまん、2時間のしあわせ」の続編のようなものです。



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「はい、おいしいかわかんないけど、昨日の配信で作ったやつ余ったからあげるね。友チョコってことでー。」

天月くんが珍しく「今から家行っていい？」なんてラインしてくるもんだから、何事かと部屋まで片付けしたのに、彼はチョコを渡して爽やかに帰って行きました。

ここ２週間くらい誰も来なかった僕の家のリビングは、それはそれはすごい有様だった。

散らばった洋服。あっちこっちに置いてある書類。エトセトラエトセトラ。

洋服は部屋着のままでもいいかなーって着替えなかったけど、部屋は片付けないとまずいレベルだったから、超特急で片付けたのに！

なのに！彼は！

「またねー！」とか言いながら、ライブ中なのかと思うほどキラキラの笑顔で手を振って、僕の家とかチラ見もせずに帰って行きやがったのであります。

ああ僕の努力よ。今日の３０分よ。


まあ天月くんへの八つ当たりはここまでにして、手の中のキュートなラッピング袋に目をやる。


一人暮らし(しかもひきこもり)だと、曜日感覚どころか今日が何日だったかも忘れがちになる。これあるあるだと思う。こんどひきフェスのとき聞いてみようっと。

そっか、今日はバレンタインデーなのか。

カレンダーを見て認識した瞬間、家の空気が少し冷たくなった気がした。

ひとりぼっちだ。


Aは記念日とかめっちゃ覚えてるタイプだから、カレンダーにはよく印がついてたなあ。
１月１日には鏡餅のイラストとか。１２月２４日にはプレゼントとリースとか。

Aがお仕事で沖縄に引っ越しちゃって、久しぶりに一人暮らしになってからは、カレンダーを見る回数すら少なくなっていたことに気づく。

いつも赤ペンで大きなハートマークが書かれていたはずの今日。

毎年恒例の、既製品よりも美味しい手作りスイーツは、どれだけ待ったってもらえないんだ。

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