【kgm】社長がダチとかラノベかな？

10_2 ページ34

「……なんか、今このタイミングで改めて言うの、すげー恥ずいんだけど。そのー……絶対に幸せにする、とかそんな大層なことは言えない。未来のことは俺にもお前にも、誰にも分からないから。知ってると思うけど、俺は全然完璧じゃないから。歪みだらけの不安定な人間で、立場的にも色々と普通とは程遠いけど……それでも、よければ。俺と付き合ってくれませんか」


　ゆっくり目を閉じて、貰った言葉を咀嚼する。なんというか、凄いど偏見で申し訳ないが……加賀美のことだから、夜景見ながらディナーして、薔薇の花束渡しながらプロポーズとかそういう感じのことをするかと思った。まあその偏見を打ち壊したのは私自身なんですけどね。さて、この時が来てしまったなぁ。ありがたい、非常にありがたいけど恋愛感情は抱いてないんだよな。幸い、彼が腹を括っている間に私の中で今すべき返答はある程度定まっている。まずそれを伝えないと。


「まず言うよ」

「うん」

「私は恋人を作る必要性を感じてない」

「知ってる」

「でもだからってこの場でスッパリ、好きだって気持ちを無下にするのはなんか違う気がするんだよ。だから、申し訳ないんだけど時間貰っていい？」

「いいけど……どんぐらい？」

「さあ？ 分かんない。私長引かせるの嫌いなせっかち野郎だからそんな時間かかんないと思うけど……一ヶ月ぐらいかけてじっくり考えるかもしれない」


　考えてみれば何か変わるかもしれない。彼が望む言葉は返せなくても、ちゃんとした答えが出せるはず。恋人を作る必要性を感じないとか、結婚する意味が分からないとか、そんなのじゃなくてもっとちゃんとした、相手に寄り添った考えが。出てくるかもしれない。だから一旦時間を貰おう、焦っても良いことなんてないから。焦って行動して、それが自分の首を絞めることになったことが何度もあるから。


「分かった、それまで待つよ」

「うん、よろしく。ちゃんと普通に振る舞ってよ」

「……善処する」

「おい。困るよ」

「いや分かってる、今まで通りな？」

「そう、今まで通り」


　難しいことを要求しているのは分かっている。が、我々は社会人。今日解散した後はすぐに帰って眠りについて、朝起きたらまたいつも通りの日常が訪れてしまう。そうしたら否が応でも出社し、タイムカードを切り、社会の歯車としてパソコン画面に向き合わなければならないのだ。

10_3→←EP.10_1

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す