殺戮の天使～偽りの後日談 (ページ34)

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ちょっとした悪戯　注　【ザック＆男主】ページ34

「いらねぇっつってんだろ！こっちくんな！」

「薬塗るだけだっての･･･。他に何もしないよ」

火傷薬を片手にザックにじりじりと近寄る

爛れた皮膚はただでさえ脆いが、殺すことしか脳の無いザックは自分の体の状態なんて気にしているわけがない

それに加えてダニーが渡す火傷薬ですら適当に塗っているぐらいだ

マトモな成人男性なら自分の傷のケアぐらい自分でできるはずだが、彼にはできないようだ

何とか説得してマットレスの上にうつ伏せで横たわってもらうまでに至った

パーカーを脱いでもらい、適当に巻いてある包帯をほどく

何度も見てはいるがやはり痛々しい

「背中はやってあげるから、前と顔は自分でやってね」

「おー」

素直に返事はしているがちゃんとやるかどうかは微妙である

それにしても、何故あんなに嫌がっていたのだろうか

「冷たいかもしれないけど我慢してね」

左手で薬を取ると茶色く変色した肌に触れた

「･･･ッ」

「ザック？どうしたの？痛い？」

大げさにぴくりと跳ねたザックに驚いて顔を覗き込む

両腕で顔を覆っているため表情は見えない

「な･･･んでもねぇよ･･･！」

もう一掬いしてさらに薬を塗っていく

その間ザックは身を捩ったり苦し気に息を吐いている

まさか、と思ったヴァルは背骨に沿って指を滑らせてみた

「ひっ･･･！」

「もしかして、くすぐったいの？」

「お前･･･！変な触り方してんじゃねぇよ！」

「薬塗ってんだからしょうがないじゃん」

「うあっ･･･！馬鹿！やめろっつってんだろ！殺すぞ！」

もう一度触るとぴくりと跳ねた

面白い玩具を見つけたがこれ以上やると身に危険が及ぶだろう

「はい、終わり。後は自分でやってね」

部屋に置いてあったタオルで指を拭うと手袋を嵌めた

そそくさと部屋を出て行こうとすると、上着の裾を思い切り引かれた

硬いマットレスに背を打ち、肺から息が押し出された

目を開けると黒と金の瞳が見降ろしていた

「悪戯が過ぎんじゃねぇか？なぁ、ヴァル」

「え、いやぁ･･･その･･･」

これはまずい、と思ったが大の男に上からマウントを取られれば起き上がるのは不可能だった

包帯という壁がなく、弱い肌がむき出しのザック相手に派手な抵抗ができない自分がいることも確かだ

「仕返しされる覚悟はできてんだろうな？」

火傷跡のある端正な顔が近づけられ、心臓の鼓動が早くなる

「いや、本当ごめんって･･･！あっ、コラ！どこ触って･･･！」