殺戮の天使～偽りの後日談 (ページ12)

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小さな生贄　【男主】ページ12

重々しい音を立ててエレベーターが止まった。次のフロアは甘い香りが漂っていた

気分が悪くなりそうなほど甘ったるい香りの中小さな影は独り歩いていく

少年の服には姉の血液が飛び散り所々赤く染まっていた

下のフロアで姉は機関銃に撃たれて死んだ

泣きながらフロアを進んでいくと大きな教会のような場所に出た

大聖堂に並べられている長椅子の一つに誰かが座っている

恐る恐る近づいてみると本を読みながら居眠りをしている青年だった

少年の頭は警告を告げていた

少年は音を立てないように通り過ぎようとすると背後から声をかけられた

温和そうな声で眠っていた青年が声を掛けたのだ

少年が青ざめた顔で振り返ると柔らかく微笑んで手招きした

警戒しながら近づくと、目から零れる涙を拭った

『下のフロアで何かあったんだろう？俺も下から来たんだ』

話によるとこの青年も最下層のフロアで生贄になり、何とかここまで生き延びたようだ

少年は何故こんなところで眠っていたのか、と聞いた

『さあ、なんでかな？気付いたらここで眠っていたっていうか･･･』

眠らされたの？と聞けば「そうかもしれないね」と答えた

『同じ目的の人に会えたんだ、一緒に出口を探そう。一人だと心細いだろ？』

少年はポロポロと涙を流しながら頷いた

『大聖堂は一通り調べたんだけど、何もなかった。本棚の裏とか怪しいけどねぇ･･･』

青年は本棚を横にずらすとその奥に通路が続いていた

『おや？正解みたいだね』

青年は少年の手を引いて奥へと進む

通路の奥にはエレベーターがあった。レバーを引いて稼働させる

今までのフロアと違い、恐ろしい殺人鬼に会わなかったのでエレベーターに乗り込んで少年は息を吐く

その背後からずるずると何かを引きずる音に気付かず

なかなか乗らない青年を気遣って一旦エレベーターから降りると鎧置物が手にしているような大きな斧を引きずる青年と目が合った

少年は急いでエレベーターに戻り開閉ボタンを連打した

閉まりかけた扉に安堵したのも束の間、片手でエレベーターの扉をこじ開ける

『酷いなぁ･･･一緒に出口を見つけるって言っておきながら置いていくのか？』

少年はただ青ざめて青年を見つめることしかできない

『良いこと教えてやるよ。このエレベーターを操作しているのは俺だ』

初めて会った時からもう逃げられなかったのだ

少年は後ずさる

『ま、逃がすほど甘くないんでね！』

小さな箱の中には赤い花弁がだけが残った