【あんスタ】みどロイド、拾った。【男主】

おかしな人。#side翠 ページ11

「おにーさん…どったの?」




Aさんが初めて俺に話し掛けた言葉。


第一印象は面倒くさそうな人だった。


酔ってるせいかなんかヘラヘラしてたし…やたら叩いてくるし…


でも、首に巻かれたマフラーはとても暖かくて…


頭に乗った雪を払われたときも、何だか頭を撫でられているみたいで心地よかった。


…暫く俺にはなかった感覚だった。


それからというもの俺は流されるままAさんの家に行くことになって…


初めてお風呂に入った。


前のマスターが入ってるのは見たことあるけど、俺は入る必要ないし…入ったことはなかった。


まぁ、深海先輩が服着たまま入ってるのはよく見かけるんだけど…あれは水だったからちょっと違うと思う。


初めてお風呂に浸かったとき、予想していたよりずっと気持ちよくて…


この気持ちをAさんに伝えたら良かったって返事されて…思わず目をそらしてしまった。


だってAさんの顔がすごく優しかったから…


…名前、綺麗だねって言われた…


何だか嬉しくて湯船の中で揺るにそうになる顔を必死に押さえようとした。







それからというもの、Aさんから与えられるものは何でも暖かく感じた。


ココアや寝床、朝ごはん作ってあげたときの反応…


どれも暖かくて、そういうのに慣れてない俺はずっと戸惑っていた。


さらにはマスターのところに戻る気がないなら此処に住んでもいいと言われた。


この人とならいいかなと思った。


…でも、この人は優しい性格だから俺に同情してこんなに優しくしてくれるだという考えが頭から離れなかった。







「前の主人なんて関係ないよ。翠くんは翠くんだ」


「翠くんが好きならそれでいいんじゃないかな？」



吃驚した。


人間なんて皆マスターみたいな考えの人ばかりだと思っていたけど…


この人は俺を否定しなかった…好きなものを認めてくれた…


マスターは俺がゆるキャラ好きであることを良しとしなかった。


だから俺は、ずっとずっと我慢して…




「…」




いつの間にか涙を流していた。


止めようと思っても止められなくて…


その時Aさんは前を向いて真っ直ぐ歩いていた。


俺の顔を見ないように…


何だよこの人、カッコ良すぎだろ…


俺はお揃いで買ったキーホルダーを優しく握りしめる。








あぁ…








この人が俺のマスターだったらなぁ…








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