第16Q 憧れ ページ18
.
――涼太の馬鹿!
確かに常日頃、口説き文句のようなことばかり言ってるやつだったけど、
よりによって今、爆弾落とさなくても!
そう考えつつ赤司のそばから離れようとしても、
がっしりホールドされてしまっていて離れなくて。
ぐっと力のこもる腕に、私は不覚にもときめいてしまった、けど。
「……涼太、私急いでるから! またね!」
気づけば注目を浴びまくりな私たち。
それにいち早く気がついた私は、
私の腰に回されている赤司の腕をつかんでその場から走り去った。
涼太が何か叫んでいるけど、そんなの聞いてる余裕はない。
……ごめん、涼太!
私は赤司の腕をつかんだまま当初の目的だった図書館前のベンチまで走りきり、
その場にしゃがみ込んだ。
自分自身の乱れた呼吸音と一緒に、どこからか
図書館は大学の中心部から少し離れた場所にあるから、
テスト前でもなければあまり学生は寄りつかない。
さっきの笑い声が遠ざかればあとは自然のなす音しか聞こえてこなくて、
今の私には心地よかったのに。
「……あの男はAの恋人なのか?」
そう聞いてくる赤司の声がやけに響いて、私の心はまた落ち着かなくなった。
「……涼太は一年のとき授業が同じで、それ以来良くしてる、だけ。付き合ってなんかないよ」
ようやく息も整って、そう答えればしゃがむ私に合わせるように赤司もしゃがむ。
「……Aは」
ああいう男が好きなのか、と。
まっすぐ私を見ながらそう聞いてくる赤司に、私は少し考えてから答える。
「……恋愛って、よくわからなくて」
――気づけば避けていた。
たまに告白されることがあっても乗り気になることもなくて。
ありきたりな言葉で断って、相手の苦笑いだけがやけに鮮明に記憶に刻まれて。
「彼氏とか、さ。本当は憧れるんだけどね」
へへっと笑ってそう言うと私は立ち上がり、改めてベンチに腰掛ける。
すると赤司もゆるゆると立ち上がって、でもベンチに座ることなく私の前に立って。
「……そんなもの、僕以外求めるな」
私を見て、まっすぐにそう言ったのだ。
.
305人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「黒子のバスケ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆあ - すごくキュンキュンしました! ヤバイですね! これからも頑張ってください! (2017年3月16日 22時) (レス) id: 8e5932bb74 (このIDを非表示/違反報告)
アリス - 吸血鬼の赤司がかっこいいです。 応援しています! 頑張って下さい^ ^ (2017年2月14日 6時) (レス) id: bf74db187f (このIDを非表示/違反報告)
かずみ - いえいえ!はい!続編おめでとうございます。 (2015年6月7日 14時) (レス) id: 56b9cb16b3 (このIDを非表示/違反報告)
藍沢鳴(プロフ) - フユトさん» ありがとうございます! これからも更新も含めて頑張らせていただきます!! (2015年5月8日 14時) (レス) id: 5e3089a4fd (このIDを非表示/違反報告)
藍沢鳴(プロフ) - さくさん» ありがとうございます! そんな風に言ってもらえて嬉しいです。(^^) これからも頑張ります!(*`・ω・´*) (2015年5月8日 14時) (レス) id: 5e3089a4fd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ