"愛す" をコンビニで買う 2 (ページ8)

今日:23 hit、昨日:17 hit、合計:118,853 hit

雰囲気ページ8

_龍友side

今日は音楽番組収録でテレビ局へ移動した。

ｺﾝｺﾝと言うリズムの後に聞こえてきた声は

どこか愛おしくて。

その方向に目を向ければAちゃんがいた。

「Aちゃん...」

不意に出てしまった、彼女の名前。

こんなにも好きで、こんなにも愛おしいのに、

好きと伝えられない。

抱きしめられない。

.

衣装の確認のために別室へ移った。

「あれ、玲於は？」

亜嵐くんの声ではっとする。

玲於もいないし、Aちゃんもいなくなっている。

2人で話してるんやろか...。

いらない不安があたまをよぎる。

「龍友くん!!玲於は後で確認させるから、先はじめるよ！」

「あぁ、うん」

.

玲於は僕に痺れ切らしたんか。

玲於なら...

なんて僕らしくない弱気な考えが巡る。

僕はどうしたって彼女を守れやん。

.

「これの一回り大きいの無いですか？さすがに龍友くんきついでしょ」

「そうやなあ、」

衣装さんが僕を見る

「確かにきつそうですね、

サイズ探してきますね!!」

そんな時、ｶﾞﾁｬとドアが開いた。

「あれ、玲於。どこ行ってたの？」

「ああ、ちょっとトイレの場所教えて貰ってた」

嘘やってすぐ分かるのに、

今の僕にはそれを信じたくなかった。

.

Aちゃんの目には溢れそうな涙が溜まっていたから。

『あ、あれ、担当の者いませんでしたか、？すみません...』

と掠れ声で言う。

「今、サイズ確認してもらってるだけですよ」

と亜嵐くんが微笑んだ。

『ちなみに、どなたの衣装で...？』

亜嵐くんはこの人ですと僕をさした。

.

『数原さん…』

悲しそうな目で僕と目を合わせる

『こちらでしたら、確か...』

とそばのラックにかかっているジャケットを持ってきて

『これでどうでしょう』

僕に手渡した。

『私が衣装まとめしたもので、把握しているスタッフが私だけで』

と笑った。

本当の笑顔じゃないことくらい、僕にだってわかった。

「A、これどうにかなんねえ？」

『これ、こっちに変えたら雰囲気変わっちゃうかな？

まっててね』

玲於とAちゃんの雰囲気は

僕には近づけないものがあった。