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「……疲れが出たんだね、ゆっくり休んでね……?」
お世辞にも綺麗とは言い難い字でそう殴り書きされていた。
「お昼もちゃんと食べてね……さとみより」
お昼?今はもう……
「____うそ、何時間寝たの」
……窓を見ると もう夕日が出ていた。
急いで時計に目をやると、17時を指していた。
昨日の疲労がどっと出たのか、ゆうに7時間は超える時間、寝ていたということになる。
今日がもし普通の日だったら大変なことになる。
王子様の叱咤やお仕置が待っている……
考えただけでグロッキーになってしまう。
ダメだ、寝起きからこんなことを考えるなんて幸先が思いやられるなぁ、なんて考えたり。
ぼーっとしながらいつものメイド服に着替える。
そして、私の頭の中はただひとりで埋め尽くされていた。
「……王子様のばか」
行くあてをなくした感情が口から溢れ出る。
「ばか、ばか……もう嫌い」
嫌い。そう、私は王子様のことが嫌いで、王子様は私のことを所有物としてしか見ていない。
それで終わりだ。
あとは私が適当な理由をつけて結婚を断ればいいだけの話。
「……なのに、どうして」
どうして、このチャンスを手離したくない、と思うのだ。
私の感情を自分でも理解できない。
あんなこともされたんだ。
やだ。好きなんかじゃない。むしろ嫌い。
____こんなにぐちゃぐちゃな気持ちになるなら、いっそもう誰かと結ばれてしまおうか。
王子様以外は私も人間として好きなので、恋愛感情はなくても一緒に暮らしてはいける。
国王がどうだとかいうのはどうにでもなるだろう。
恋愛感情なんて後から育めばいいのだから。
……我ながら名案だ、と思った。
____一緒に暮らすなら誰がいいだろう。
莉犬様はおいしいお菓子を作ってくれるし、可愛い。
ななもり様はとにかく優しいし、たくさん甘やかしてくれる。
ジェル様は私が言ったらなんでも叶えてくれそうだし、面白い。
さとみ様は私のことを第一に考えて、守ってくれる。
ころん様は行きすぎだとしても惜しみない愛をくれる。
こんなにも、素敵な人たちが周りにいるじゃないか。
王子様なんかに囚われていたら人生がもったいない。
……そう念じていても、脳内から、昨日のクローバー畑で見た笑顔が消えてくれない。
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虹の根本付近に生息しているアイ(プロフ) - 泡糖さん» こちらのほうでもコメントありがとうございます(T T) 以前もらった泡糖さんのコメントが本当に嬉しく、今でも活力になっているので またコメントくださって嬉しいです💕 これからも更新頑張ります! (2022年3月4日 21時) (レス) id: c4be3cb89b (このIDを非表示/違反報告)
泡糖(プロフ) - 更新ありがとうございます!今回も読んでいて楽しかったです! (2022年3月4日 21時) (レス) id: eaad00c70c (このIDを非表示/違反報告)
虹の根本付近に生息しているアイ(プロフ) - 泡沫さん» 泡沫さん 本当にいつもコメントありがとうございます✨ 大丈夫ですよ!笑 あれは完全にゴキブリを意識してます、気づいていただけて嬉しいです……笑 (2022年2月10日 8時) (レス) id: c4be3cb89b (このIDを非表示/違反報告)
泡沫(プロフ) - カサカサ…でゴキブリだと思ってしまった私は末期ですね(遠い目) (2022年2月10日 0時) (レス) @page25 id: 7687e77697 (このIDを非表示/違反報告)
虹の根本付近に生息しているアイ(プロフ) - 泡沫さん» 泡沫さん いつもありがとうございます!! 切り方もお誉めもいただき光栄です……ありがとうございます(T T) 今後の展開に乞うご期待です!笑 (2022年1月30日 8時) (レス) id: c4be3cb89b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:虹の根元付近に生息しているアイ | 作成日時:2022年1月13日 18時