Side Story.5 ページ10
…ん
車の音がする
ケイゴが帰って来たかな
って、トラック？
それも何台も
跡部邸の前はトラックが通過するような一般道ではないはず
…えっ敷地内入った？
門の滑車を越えた音がしたよね？
トラックが？
急いでロータリーに向かうと、いつものリムジンと、大型トラックが何台もゾロゾロと敷地内に入ってきていた
リムジンからさも普通のようにケイゴが出てくる
「あん？A、テメーが出迎えとは珍しいじゃねーの」
「…おかえりなさい」
いや後ろ
気になりすぎるわ
「あの、トラックは一体何でしょうか」
ケイゴが部屋に向かうので、それまで後ろについて行く
「A、今日は何の日か知ってるか？」
「バレンタインですよね」
なんで皆私が知らないみたいに聞いてくるの
どうせ私は世間知らずですよ
「なら分かるだろ、チョコだ、チョコ」
「トラック全部ですか？」
「ったりめーだ、全国民が俺様にチョコレートを渡す日だからな」
この人バレンタインの日を私以上に分かってないぞ
間違って覚えちゃったのかね
「へえ、6500万人がケイゴさんに」
1億3000万÷２
「全国民つったろ、70億人だ」
何の国民だよ
「何個か食うか？」
「何言ってるんです、全国民がケイゴさんを想って渡したものなんですから、あなたが全国民から想われてる責任を持って全て食べ切ってくださいよ」
「よく分かってんじゃねーの、元からそのつもりだ」
ケイゴが、自室の扉のドアノブに手をかけたところで、こちらを向く
「で、俺様に用があんだろ
俺様を出し抜こうなんて100年はえーんだよ」
「…」
先手を取られた
ドヤッとした佇まいが無性に腹が立つが、仕方ない
「…どうぞ、70億分の1ですが、暇な時にでも食べてください」
「…お前、手作りしたのか」
「そうですよ、悪いですか」
「ただ以外だっただけだ。お前料理出来なさそうだしな」
「…」
ええいうるさい
スルッとそのままリボンを取り、箱を開ける
クッキーを一つ取り、形や匂いを見てから口に運んだ
何この時間凄い緊張する
修行中の弟子が師匠にお寿司握ったみたいな感じ
「…形も歪、色も若干焦げて、何枚か割れてんな」
ダメ出ししてきたんだけど
なんで全国民コイツにチョコあげてんの
「だが、味は悪くねえ
来年はもっとマシなものを持ってこい」
「は、はぁ？どの立場で言ってんですか
来年はケイゴさんの肥えた舌を唸らしてやります
…楽しみにしててくださいよ」
宣戦布告
Happy Summer Valentine Day！
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作者名：メグ x他1人 | 作成日時：2019年8月11日 9時
