Act.10 ページ15
「お客様！お待ちください！！」
突然フロアに響いた女性の悲鳴とも取れる叫び声
遠くの方に見えるのは、全身を黒い服に包み、サングラスやフードなどで顔を覆ったいかにも怪しい男。
手には工作などで使うようなハンマーと口の大きなハンドバッグが大事そうに抱えられている。
人混みを突き飛ばしながら、こちらの方へ走ってくる。
突き飛ばされた客達は、一瞬の出来事で男を追う余裕もなさそうだ。
ちらほら悲鳴が聞こえたり、何だ何だと人が集まって来る。
「ケイゴさん、もう少し後ろへ下がってください」
その中で1人、道を退こうとせず、見向きもせずその場を動かない奴が居た。
「A、行けるか？」
Aは、意識を集中させるようにゆっくりと目を閉じた。
「…そこに、
足音はどんどんと近づいてきている。
そこの女の子！避けて！という声も上がる。しかし、まだAは目を閉じたまま動かない。
「ッラァ！退きやがれテメェ！！」
声を荒らげても動く様子がない少女に、男は手に持っていたハンマーを振り上げた。
危ない＿＿＿思わず目を背けるその瞬間、
Aは男の目の前で、一瞬にして
何が起こったか分からない男は、バランスを崩して、走ってきた勢いのまま、Aの上を飛ぶ。
「僕の刃…受け止めてよ、ってね」
飛び出した男の首にAが掴みかかったように見えた。直ぐに離すと、男は勢いよく床を滑る。Aは跳ね飛んだハンドバッグを俺の方に投げ、ハンマーを
男の手の届かない所に蹴った。
この一連の流れを、先程まで騒いでいた奴らは映画のワンシーンを見た時のように目を奪われたようで、誰も何も声を上げなかった。
「大丈夫ですか！」
と、最初に男を追っていた女性店員が数人の警察を連れて走ってきた。
そこでこの場に居合わせた人々は皆、はっと意識が戻ったように安堵の声や興奮を口にし始めた。
「ケイゴ、さん」
腕を引かれた方を見ると、居た堪れないような顔をして青ざめたAがいた。
俺は警察と倒れて動かない男を一瞥して、Aと一緒にその場から離れた。
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作者名：メグ x他1人 | 作成日時：2019年8月11日 9時
