【銀魂】花時の青い夢【合同企画】 (ページ10)

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けれど、やはり酒とは怖いもので、私にそれを訂正する気は起きなかった。
それどころか、「そーだな」……話が続いてしまう始末。酒にぬれて赤味を増した彼の唇が、音を紡ぐため歪んだ。

「二年間？くれェだったか」

「ざんねん、一年九ヶ月でした」

「覚えてんのかよ」

呆れたように笑う銀時へ向けるのはこの上ない苦笑である。

「女々しく昔の手帳に記念日控えてあったの」

「マジでか。女かよ」

「女だわ」

それに、高校生風情だし？
付け加えたそれに「あァー……」彼の顔も苦くなる。

「……恥ずかしげもなくクサイ台詞ぬかしてやがったっけか、ケツの青いガキが」

「ケツが青くて銀髪のねじ曲がったガキがね」

「うるせーなお互い様だろ」

いかにも、そのなんとも痒い思い出には心当たりがあった。それどころか、所謂コイビトらしいことというか、“初めて”と名のつくことは大体こいつとこなしてしまった気がする。いやもちろんプラトニックな範囲でだけれど、つまりは、まぁ、その、セイシュンってやつ？

けれども、いくら事実だとしてもそれを受け入れるには少々酔いが足りない。無理ナニコレ超恥ずかしい。よって、

「はぁ？誰が？全く記憶にない」

恥ずかしさを誤魔化すように、銀時から目をそらした。――が、しかし。

「へェ、覚えてねーのAチャンは」

「チャン付けきもい」

「――俺は覚えてっけど？」

ぜーんぶな、とかなんとか。私をからかうようにその唇が弧を描く。少々のイラつきからその目を睨みつけて、――一瞬で後悔した。

昔と同じ。気力なんてこれっぽっちもこもっていない。でも悪戯っぽく細められたその優しい眼に、瞳を絡み取られる。きっとそいつはこの眼の奥で、私の睨みの威力のなさを面白がっているのだろう。

「んな顔したって怖くねーよ」

ほらね、この通り。こいつはそういう奴なのだ。人をからかうのが大好きで、面白がるのも大好きで、バカでアホで、むかつく野郎。でもそれ以上に、優しい男。

だからつまり、――私がどうしてこいつに惚れていたのか、思い出してしまった。