【銀魂】花時の青い夢【合同企画】 (ページ11)

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「……さいあく」

「そこまで黒歴史かよ」

「……そういうこと。いいから飲むよ」

あの頃求めていたものは爽やかな甘さだった。まるでソーダ水のような、弾けて消えてしまいそうな。
一過性のそれに期限が無いはずがなかった。賞味期限が切れた途端、微温くなってしまった途端、すぐに捨てられて、空き瓶だけを少しの間ぽうっと眺めて、でも、いつかそれすらもリサイクル。時間が経てばその味すらも、綺麗だと陽にすかしたビー玉の色すらも思い出せなくなってしまう。そんな程度の、弾けて消えた淡い恋。

それを、今更掘り返してどうするんだ。

「――昔のことなんかもう爆笑モンだよ」

自らに言い聞かせるようにして日本酒をあおる。今求めているのはコレなのだ、鼻から抜けていくこの味。
決して、ソーダ水などではない。

「ま、青かったしな」「そ。青かったから」若気の至りなんていう便利な言葉に全てをくるんで、ポイ。また他愛ない話を交わしてゆく。

近況やら何やらを報告し終えた頃には、お互いすっかり出来上がっていた。

＊

「そんなに飲んで大丈夫なわけ？」

序盤より大分増加したテーブルの上の空ジョッキを見つめて言ったのは私である。

腕時計へ視線を落とせば、現在時刻はもう少しで日付を跨いでしまいそうな時間。そろそろ帰らないと、終電がなくなる。

銀時は「大丈夫に決まってんだろ」なんて言っているけど、そのほのかな赤ら顔を見る限り強がり以外のなにものでもないだろう。呆れ混じりに息を吐いて伝票を確認した。

「明日も仕事でしょ、さっさと帰らないと」

「遅刻なんざいつものこった、問題ねェ」

「問題しかないっての主にアンタの人間性に」

そのボリューミーな頭へ軽くチョップを落としてみる。「いってーな」全く痛くなさそうな声はそのままに腰を上げた。私だって明日は仕事なのだ、そろそろお開きにしなければ。

「ちなみにここは奢ってやるよなんて展開あったりする？」

「お前俺にそんな男気期待してんの」

「そんなことだろうと思った」

黒いパンプスに足をさし込むと、途端に酔いがさめた気がした。
そういえば私って社会人じゃん、高校生じゃ、ないな。コイツと会うことも、ただの、なんてことないイレギュラー。――なんて、ぴたりと馴染む真っ黒に、現実へ引き戻される午前零時。ガラスの靴とは大違いだ。

わいてきた名残惜しさは、見なかったことにして一歩を踏み出す。

「先にお会計してくるよ」

おーよ、とかなんとか、銀時は相変わらず気の抜けた返事をくれたのだった。