49.紫 ページ10
#gr side
『ご苦労だったな。』
??｢相変わらず人使い荒くてかなわんわ。｣
目の前で窓の外を見つめ、面倒くさそうにタバコをふかすこの男は、紛れもなく我が国の幹部である。
なにか事情でもあるのか、なかなか帰ってこようとしない。
『任務はもう終わってるんやろ？』
??｢まぁな。｣
『なぜ戻らない。』
??｢もうちょっと旅してたいねん。｣
『働けや。』
ははっと乾いた笑を零しながら、またタバコを吸うコイツの心理はわからない。
無理やり捕まえようとするといなくなってしまいそうで、コイツが帰りたいと言うまで連れては帰れない。
元々コイツは我が国に潜入してきたスパイで、一悶着あってから正式に国民になった変わり者だ。
今尚、その何を隠しているのかわからない表情にはゾクリと背中が凍えるような恐ろしさがあった。
??｢ま、ホントはガキ拾ったんや。｣
『……あ？』
突然ふっと笑ったかと思えば、隣から聞こえたのはとんでもなく笑えない冗談。
そんなサラッと言うことか？
俺みたいに無愛想なやつでなぁ、可愛くないねんけどよう働くねん。
何故か幸せそうに語る様子から俺は自身の顔を歪ませる。
『お前まさか、』
??｢ん、まぁそういうことやな。｣
失望、落胆。
その場に崩れ落ちたくなった。
そんな俺を見て隣のコイツはまたさらに笑う。
??｢ちょっと相談やねんけど。｣
『なんだ？まさか俺に、コイツは子供の世話をしていて帰れなかったらしいと、馬鹿馬鹿しい話をさせるのか？』
??｢そんなことはさせへんよ。｣
タバコを灰皿に押し付けてこの男は窓の下を見た。
いつの間にかそこには、奇抜な2輪が停まっている。
その横で俺より少しばかり年下に見える青年がヘルメットを外して頭をかいていた。
頭を上げたその男の目は、俺の隣の男と同じ色をしていた。
??｢アイツと一緒に帰りたいねん。｣
青年はその目で俺を見ると、ぺこりと頭を下げた。
なるほど、もともと拒否権なんかないんだな。
俺は怪訝な顔で隣の男を見つめた。
銀縁のいかにも賢そうなメガネの奥がゆっくりと細められる。
??｢俺が連れてくる人なんか信用出来んか？｣
コイツは真剣だった。
まぁ、わけアリのトン氏がいる限りコイツが国を裏切ることは無いだろうし。
何より、面白いじゃないか。
『名前は？』
??｢いや、よう分からんあだ名しか覚えとらんねん。｣
その名前はあまりにおかしくて、ちょっと笑ってしまう。
俺は窓の下の青年に声をかける。
『ようこそ。ショッピくん。』
隣の男、兄さんの頼みじゃ仕方がない。
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らりるれろん(プロフ) - 更新停止ですか…ずっと待ってます。この作品がとても好きです、応援してます。 (2020年7月5日 10時) (
レス) id: 2108271c54 (このIDを非表示/違反報告)
うさぎまる - 好きです、こじれ具合とても好きです、応援しております。 (2019年4月8日 19時) (レス) id: c595f3c6d5 (このIDを非表示/違反報告)
うめる(プロフ) - 好きです(唐突な告白) (2018年10月9日 1時) (レス) id: 78e56762eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もろと | 作成日時：2018年3月12日 23時
