47.壊さないで ページ8
#kn side
自室に戻って扉を閉めると、俺はそのままその場に座り込んだ。
扉を背に足を投げ出して天井を見上げる。
ガラスの装飾やら、無駄に着飾った電光が昼間からギラギラと光っていて目が痛んだ。
1時間も経っていないあの短い時間が何度も何度も頭の中を駆け巡る。
何したっけ？
何言ったんだっけ？
思い出そうと頭をひねっても、唯一思い出せるのはアイツらの冷めた目だけだった。
『あぁ……くっそ…』
嫌なことばかり思い出す。
ずっと忘れてた、忘れたかった記憶がまた鮮明に這い出てくる。
なんで、ずっと隠してたはずなのに。
Aは何もしてないことは分かってる。
それでも、俺はAか嫌いや。
アイツが来てから、俺らは明らかに変わっている。
俺たちを壊している。
俺が憧れてたグルッペンが、あんな姿になったのも
大先生がフランスに行ってたのがバレたのも
トントンがソ連について思い出したのも
アイツらが仲間の死を偲び始めたのも
こんなに悲しくなるのも
全部Aが来たせいで
『んああああああ！！いかんいかん！！！俺はなんつー事考えとんのや…あかん、あかんでぇ…』
足をバタバタしながら自分の頭を掻きむしった。
気に食わんけど、今は流れに乗るしかない。
アイツらがAを信じるなら俺も信じるしかない。
重たい腰を上げて自分の机へ向かった。
ふと、足元がふらついて、本棚に右半身を強打する。
『ったたたた……』
衝撃で落ちた写真立てを拾い上げた。
特に他人に興味が持てない俺の、たった一つのお気に入り。
俺たち幹部が肩を並べている写真。
トントンとグルッペンはこの頃まだ仲が悪くて、お互い睨み合っている。
シャオロンとロボロは相変わらず仲良さそう。
俺は痩せこけた大先生と肩を組んでる。
最後に写真を撮ったのはいつだったか？
ほんとは知ってる
これが最初で最後の写真だってこと。
『どうすれば戻れるんやろうな』
いつからトントンはグルッペンに敬語で話すようになったんだろう。
大先生はどうしようもない女好きになったんだろう。
その時初めて、俺たちは変わってしまったことを確信させられる。
Aが来るよりもずっと前から。
むしろ、変わってないのは俺だけや
机の中から1枚の手紙を手に取った。
昨日、匿名で届けられた手紙。
《Dere : 皇太子殿下》
陛下がお亡くなりになりました
至急お戻りください
次の王はあなたです
壊さないで。
俺の大切なもの
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らりるれろん(プロフ) - 更新停止ですか…ずっと待ってます。この作品がとても好きです、応援してます。 (2020年7月5日 10時) (
レス) id: 2108271c54 (このIDを非表示/違反報告)
うさぎまる - 好きです、こじれ具合とても好きです、応援しております。 (2019年4月8日 19時) (レス) id: c595f3c6d5 (このIDを非表示/違反報告)
うめる(プロフ) - 好きです(唐突な告白) (2018年10月9日 1時) (レス) id: 78e56762eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もろと | 作成日時：2018年3月12日 23時
