脱走とは、そんなに悪いことですか？3【文スト】 (ページ8)

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お久しぶりです。

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№ Side

凡てがモノクロの世界で、少女はまた新たに目覚める。
何も感じない。

少女＿＿＿ファーの世界には誰も存在しない。勿論、自分自身さえも。

凡てがモノクロの世界で、一筋の光が見えた。モノクロの世界にはない、黄色い光だ。

　ファー『......？』

ファーは何も感じない一方、光の方に手を伸ばしてみたくなった。自信はないけれど自分を、何も感じない私を救ってくれるような気がしたから。
光にあと一歩で届きそうな距離になったとき、誰かがファーの手首を強く握った。

　エレク「駄目ですよー、ファー？」

エレクの行動、声によりファーは一気に何もない黒い部屋へと意識を戻される。
ファーが黒い部屋だと思っているが、実際は黒以外にも白、緑、青、茶の色があった。

ファーが近くにエレクの存在があると気づいたときには、既にエレクとの距離はゼロになっていた。

　エレク「僕はー、ファーの気持ちが判るんですよー？だからー、こう云ってあげますー。”Aは誰にも渡さない”。例えファーの大切な人であってでもですよー？」

　ファー『......』

ファーは何も答えない。ファー自身が初期化(フォーマット)されたかのように語彙が存在しなかった。だから、何も答えられない。答え方が判らない。
エレクの顔さえ判らなかった。生まれたての子供と同じくらい、何もわからなかった。エレクの顔でさえも、ぼんやりと、辛うじて輪郭を保てているようにしか見えない。

　エレク「......やりすぎましたかねー？まぁー、これくらいが丁度良いですけどー。うーんー。僕の名前くらい云ってほしいですー。」

ファーの語彙が突如増えた。元々なかったのに、一つ追加されたかのような感覚。

　エレク「僕の名前はー？」

　ファー『えれく』

エレクは満足げに頷く。
その一方、ファーはエレクと思わしき顔をただただぼんやりと見つめるだけ。

　エレク「ファーは何も感じなくて良いんですー。ただー、僕の事だけ瞳に映してー、僕に凡て従えばいいんですー。どうせー、ファーは僕から逃げられないんですもんねー。」

殺風景な部屋で、男と少女は言葉にならない会話を続けていく_____