検索窓
今日:5 hit、昨日:56 hit、合計:8,700 hit

42 ページ43

朧げな視界に平子の姿が映る。
 握られた手から伝わる彼の体温で、意識が再編成されていく。
「沙夜っ!!」
「真子……ごめん。 私、何もできなかった……」
「何言うてんねん……お前が生きとってくれたらそれでええわ。もう全部終わったんやから」
 それから平子は、沙夜が意識をなくしている間に起きたことを語った。
 死神たちや仮面の軍勢の容体は安定している。
 一護は死神の力を使い果たしたが、藍染は封印された。脅威は過ぎ去ったのだ。
 平子は心底愛おしそうな目で沙夜を見つめ、頬を撫でる。
「……好きや。もうどこにも行かんといてくれ」
「……真子こそ、置いて行かないでね……」
「当たり前やろ。俺を誰やと思うてんねん」
 平子は幼い子のように眩しく笑い、沙夜の頭をわしゃわしゃと撫でる。
 沙夜は昔から彼の笑顔が一番好きだった。
 しかし、神は残酷だ。
 沙夜の全身が霞みだす。
 これから起こることを察してか、平子の表情が悲痛なものに変わる。
「なんでや……峠は越えたやろ!?」
「ごめん……藍染にやられた傷が思ったより深かったみたい」
 沙夜はウルキオラほどではないにしろ、内臓を損傷していた。
 想像以上のダメージで、現実世界に顕現し続けられなくなり、身体が霊子に還りつつあった。
「嫌や……やめろやめろ!! やっと解放されたんや、これから楽しい毎日が待ってるはずやろ! どこにも行かんといてくれって、そう言ったやないか……」
「……何も持ってなかった私に、真子が未来をくれたんだ。ありがとう」
 泣いてすがる平子を優しく抱きしめる。
 もう触覚はないが、体温はまだ伝わってくる。
「大丈夫、きっとまた会えるよ。真子がピンチの時はいつだって駆け付けるから」
 頬を寄せ、唇に触れるだけのキスを落とす。
「真子……大好き」
 咲き誇るような笑顔と共に、沙夜は夕日に融けていった。

 戦火の爪痕が残る中、平子は五番隊隊長に復帰することになった。
 平子は二度も目の前で恋人を失いながら、傷付いた様子を(少なくとも表向きは)おくびにも出さず、新たに部下となった雛森とも良好な関係を築いていった。
 生きている限り、沙夜は自分の中で記憶の欠片として存在し続ける。
 それは時がたつにつれ薄れることはあれど、決して消えることはない。

 開け放たれた障子から優しい風が吹き込んでくる。
 平子は今も、愛しい恋人の帰りを待ち続ける。

あとがき→←41



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (11 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
35人がお気に入り
設定タグ:BLEACH , 平子真子 , 夢小説   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

kocha28012(プロフ) - めっちゃ面白かったです!続編待ってます! (12月30日 1時) (レス) @page44 id: a73870853f (このIDを非表示/違反報告)
ねーぶる。(プロフ) - 高評価ありがとうございます! 恐れ入りますが、この小説は名前固定(オリキャラ)とさせていただいてます。それでもよろしければ、引き続きお楽しみください♪ (7月25日 8時) (レス) id: 6d62d65eb7 (このIDを非表示/違反報告)
なでこここ - めっちゃ面白いです!!名前変換だけできてない箇所があるので直してくださると嬉しいです🥺💕 (7月25日 6時) (レス) @page3 id: bdaf2286ee (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ねーぶる。 | 作成日時:2023年7月3日 13時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。