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平子は固く目を瞑る。
しかし、いつまで経っても胴体が斬り裂かれることはなかった。
首だけ傾けて振り向くと、沙夜は寸止めしたまま大粒の涙を溢していた。
当然だ。虚に堕ちるほど愛した人を殺せるわけがない。
「できない……」
本来なら、刀は平子の喉と心臓を正確に突き刺すはずだったが、動揺していたせいで大幅に照準がぶれてしまったのだ。
深海檻が弾け、平子は激しく咳込む。
沙夜は膝から崩れ落ち、堰を切ったように泣き出した。
平子はそんな彼女を優しく抱きしめ、頭を撫でる。
「ええカッコしいが……自分だけ犠牲になろうなんて、そんなの許すわけないやろ」
この隙を藍染が見逃すはずもなく、平子の背後に刀が迫る。
沙夜は咄嗟に平子の頭を抱き込む。
身体中を覆う水の膜・水神羽衣《ディオス・プルーミジ》が刀を受け止めた。
これほど刀剣解放しておいてよかったと思ったことはない。
「真子、大丈夫?」
「おう。 胸にも埋もれるし、むしろ役得やな」
「こ、このスケベ!!」
ひよ里の影響か、沙夜は平子の脳天に容赦なく拳骨を落とした。
「痛ァ⁉︎ 何すんねん! 俺怪我人やぞ!」
そうしている間に、藍染は十刃を完全に見切り、ハリベルを斬り付けた。
大量の血を流しながら落ちていくハリベルを見て、沙夜は息を詰まらせる。
平子はそれ以上見せないように、彼女を背中に隠した。
「さぁ始めようか、護廷十三隊。そして、不出来な”破面もどき”たち」
藍染の挑発に乗り、ひよ里が刀を手に飛び出していってしまう。
その瞬間、ギンの斬魄刀・神鎗がひよ里の身体を真っ二つに斬り裂いた。
「おひとり様、おー終い」
「ひよ里!!!」
「い……嫌あああああああ!!」
宙を舞うひよ里の下半身を目の当たりにし、沙夜は絶叫する。
「ご……ゴメンな……真子……ウチ……ガマンできひんかった……」
瞬歩で駆け寄ってきた平子に息も絶え絶えに謝罪するひよ里。
必死に傷口を押さえるが、その手は血に塗れていく。
ハッチがどうにか命を繋ぐが、織姫か卯ノ花がいない以上、その場しのぎにしかならない。
覚悟を決めた平子は、鋭い目で藍染を睨みつけた。
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kocha28012(プロフ) - めっちゃ面白かったです!続編待ってます! (12月30日 1時) (レス) @page44 id: a73870853f (このIDを非表示/違反報告)
ねーぶる。(プロフ) - 高評価ありがとうございます! 恐れ入りますが、この小説は名前固定(オリキャラ)とさせていただいてます。それでもよろしければ、引き続きお楽しみください♪ (7月25日 8時) (レス) id: 6d62d65eb7 (このIDを非表示/違反報告)
なでこここ - めっちゃ面白いです!!名前変換だけできてない箇所があるので直してくださると嬉しいです🥺💕 (7月25日 6時) (レス) @page3 id: bdaf2286ee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ねーぶる。 | 作成日時:2023年7月3日 13時