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「佇め、彼岸幽景《シレニータ》」
 掛け声と共に、激しい渦潮が沙夜を包む。
 次に顔を出した時には、両耳とスカートがヒレ状に変形し、人魚姫を彷彿とさせる姿になっていた。
 左手の杖を振り、前方に円を描く。
 そこに紺青のエネルギーが溜まっていき、ハリベルに向けて撃ち出される。
「虚閃か!」
 虚閃は途中から360度に回転し、ハリベルに襲いかかる。
 その時、横から緑の閃光が割って入り、虚閃を打ち消した。
「ウルキオラ……」
「これ以上騒ぎを起こすな。藍染様にご迷惑だ」
 ウルキオラの言う通り、帰刃の余波と虚閃で中庭はボロボロになっていた。
 沙夜の帰刃が解けたのは、そのすぐ後だった。
「行くぞ」
 若干よろめきながら後を追う沙夜に、ハリベルが声をかける。
「見事な帰刃だった。鍛えれば相当のレベルになるだろう。期待している」
「……ありがとうございます」
 真っ直ぐな評価に、口からは自ずと礼の言葉が出た。
 藍染に加担していることとは関係なく、ハリベルの高潔な精神は沙夜にとって好ましいものだった。
 彼女と戦わないならそれが最善だと思った。
 僅かな胸の痛みに、我ながら甘い考えだと自嘲する。

 しばらく無言で廊下を歩いていたウルキオラだったが、突然立ち止まり、沙夜は彼の背中にぶつかった。
 鼻を押さえてうめく彼女をよそに、ウルキオラは何か思い出したように振り返る。
「お前……変わったな」
「はい?」
「霊圧から迷いが消えている」
 きっと、虚という現実を受け入れ、平子だけの味方になると決めたからだろう。
「……どちらかと言えば、今のお前のほうが好ましい」
 ウルキオラの口からそんな言葉が出たことが意外で、沙夜は思わず吹き出してしまう。
 心を持たないはずの彼だが、その一言には、確かに感情が宿っていた。

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設定タグ:BLEACH , 平子真子 , 夢小説   
作品ジャンル:恋愛
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kocha28012(プロフ) - めっちゃ面白かったです!続編待ってます! (12月30日 1時) (レス) @page44 id: a73870853f (このIDを非表示/違反報告)
ねーぶる。(プロフ) - 高評価ありがとうございます! 恐れ入りますが、この小説は名前固定(オリキャラ)とさせていただいてます。それでもよろしければ、引き続きお楽しみください♪ (7月25日 8時) (レス) id: 6d62d65eb7 (このIDを非表示/違反報告)
なでこここ - めっちゃ面白いです!!名前変換だけできてない箇所があるので直してくださると嬉しいです🥺💕 (7月25日 6時) (レス) @page3 id: bdaf2286ee (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ねーぶる。 | 作成日時:2023年7月3日 13時

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