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その夜、沙夜が寝たのを確認して、平子はこっそりとアジトを出た。
月明かりを頼りに人っ子一人居ない道を歩き、ある場所へ向かう。
「喜助おるか?」
「おや、平子サンじゃないスかァ。こんばんは」
「夜分遅くにすまんな」
「全然良いっスよ。ささ、どーぞ中へ」
まだ何も話していないというのに、顔色で察したか、浦原はさっさと平子を奥の座敷に通した。
「で、話というのは?」
「実はな……沙夜の胸に穴が空いてんねん。おまけに戦う時に仮面まで出た。割れとるけどな。これは虚の特徴やろ?」
浦原もまた、100年前から沙夜の存在は聞かされている。再び出会えたと知った時は、改めて平子に助力を惜しまないと誓った。
「確かに、聞く感じじゃ虚そのものスっね。つまり、沙夜サンは生まれ変わったんじゃなく、100年前の彼女自身ってわけか……」
そうなると、記憶は時間が経つごとに色褪せていったと見るのが自然だろう。
「ところで、沙夜サンは斬魄刀持ってるっスか?」
「持ってるで。 体内にあるみたいやけどな」
「考えられる説が一つあって、最近現世に来てる破面《アランカル》なんスけど」
浦原は何か引っかかる節があるようだった。
「破面は虚が仮面を破って死神に近付いた存在のことを言うんスね。で、彼らにとっての斬魄刀は虚の力を封じたものっス。 ……つまり沙夜サンは、破面かもしれない」
平子はゴクリと生唾を飲み込む。
「仮に沙夜サンが破面だとして、平子サンはどうするんスか?」
「決まってるやろ。虚やろうが破面やろうが、絶対に守り抜く」
「……それを聞いて安心したっス」
死神としてなら、虚は斬るのが正しい姿なのだろう。
しかし、仮面の軍勢も虚化できる時点で似たようなものである。人のことは言えない。
ならば、自分は正しくなくていい。
沙夜には心がある。
だから、彼女は化け物などではないのだ。
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kocha28012(プロフ) - めっちゃ面白かったです!続編待ってます! (12月30日 1時) (レス) @page44 id: a73870853f (このIDを非表示/違反報告)
ねーぶる。(プロフ) - 高評価ありがとうございます! 恐れ入りますが、この小説は名前固定(オリキャラ)とさせていただいてます。それでもよろしければ、引き続きお楽しみください♪ (7月25日 8時) (レス) id: 6d62d65eb7 (このIDを非表示/違反報告)
なでこここ - めっちゃ面白いです!!名前変換だけできてない箇所があるので直してくださると嬉しいです🥺💕 (7月25日 6時) (レス) @page3 id: bdaf2286ee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ねーぶる。 | 作成日時:2023年7月3日 13時