storia6-9 〃 〜sezione1 同じ顔が2つ〜 ページ38
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「大丈夫?
ゆうたくん、苦しくない?お腹空いてない?」
ゆうたくんが風邪をひいた。
「一人で大丈夫?」
「……ニキ。」
ゆうたくんの左手が震えながらもそっと俺の服の裾を掴む。
「ムリ……は……しない…で、ね。」
「……心配してくれてありがとう。
大丈夫!お兄ちゃんにどーんと任せなさい!
じゃあ、行ってくるね。」
鍵もかけられなくなったボロボロな扉を閉め、階段を下りる。
「……ん。」
一歩入ればそこは夜の街。
俺の仕事は飲み屋でのバイト。
時給は低いしバイトへの態度も良くないけど、雇ってくれてるんだから文句は言っていられない。
今日も頑張ろう。
そう自分に言い聞かせ、きらびやかな町に向かって一歩を踏み出す。
が。
ぐにゃり、と視界が歪む。
まずい、と思った時には既に手遅れで。
俺の体は前に傾き始めていた。
だめだ。
体が前にゆっくり倒れる。
「おっと。大丈夫?」
体が支えられた。
ぼんやりと人影が見える。
「ありがとうございます……。」
だめだ。ここで倒れたらゆうたくんが……。
「ちょ、まだ動くの?
だめだよこんなふらふらなんだから!」
「貴方にはわからない!」
俺が叫ぶと、その人は驚いたように俺の腕を離した。
「ご、ごめんなさい……。
でも……でもっ。
俺が頑張んないと……弟がっ。」
そうだ。ゆうたくんが待ってる。
早く行かないと……。
行こうとした俺をまた手が掴む。
その手は優しく俺の頭の上を動く。
「弟くんはどこに居るの?」
優しい言葉。優しい仕草。
ここ数年で、一番の優しさ。
俺の口は無防備にも言葉を紡いだ。
「すぐ近くのアパートに……。」
「わかった。」
その人が優しく微笑むのが見えた。
次の瞬間、鈍い痛みが全身を駆け巡る。
「な…に、を……。」
「大丈夫。安心して。
すぐ弟くんも連れていくから。」
薄れ行く意識の中、その人が俺の腹から拳を抜き取りながら微笑んだのが見えた。
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玲乃音(プロフ) - フォンテインさん» お帰りなさい!! 待ってました!あんスタの続きも楽しみに待ってました! (2020年1月5日 17時) (レス) id: 02b3e189b5 (このIDを非表示/違反報告)
フォンテイン(プロフ) - *神*威*さん» 読んでくださりありがとうございます!m(__)m更新頑張らせていただきます! (2017年10月10日 6時) (携帯から) (レス) id: f1eeea7ade (このIDを非表示/違反報告)
*神*威* - 最初から何度も読ませていただきました!一人一人の個性(?)がいいと思います!とても読んでいてワクワクするので、これからも更新頑張って下さい(*- -)(*_ _)ペコリ (2017年10月9日 23時) (レス) id: 662403215f (このIDを非表示/違反報告)
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