量 産 型 ぽ た く 【 うらたぬき 】

えいと ページ9

｢よ、余韻半端ない...坂田さんかっこよすぎた......｣

｢えっ志麻さん顔良すぎて無理｣

｢センラさんの顔面今日も尊かった。｣

｢うらたさん顔かっこかわいいし行動イケメンとかなにそれ...一生推します......｣

会場裏から出て悶えながら駅に向かっていると、crewがたくさんいた。

そうか、私たちは特別なんだよね。

改めて思うけど、こんなことはなかなかないんだ。というか、奇跡に等しい。

幕張メッセにいた15000人のcrewに、今回のライブに来れなかった人達。

私たちは、そんな大勢いる人々の中の4人。

本当にすごいことなのだと感じた。


｢今日のこと、絶対に誰にも言わないようにしなきゃね｣

横でゆなが呟いた。

こころとしおりもそっと頷く。


みんな同じこと考えてたんだ...。

目の前にたくさんのcrewがいるとなると、やっぱり気持ちは複雑で。

推しがあまりよくないことをしているけれど、それを純粋に喜んでしまう自分が嫌になる。

もし自分が今目の前にいるcrewの中の1人で、今回のことを知ったら降りるかもしれない。

きっと推しに失望するし、泣いて悲しむと思う。


そんな重大なことを今日私たちは、やったんだ。

今回の選択が正しかったかはわからない。

でも、もう今この瞬間から私と推しはただの『推しとリスナー』じゃない。

何らかの関係を持ったんだ。

それはなんだか嬉しいようで悲しいような、やるせない気持ちだった。

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