酒豪 ページ37
「あぁ……やぁーっと来たね、アラン」
一人は疲弊した表情の親父。いつもの俺なら「急に呼び出すな」くらいのセリフを吐いていただろうが、状況を知って言葉を呑み込んだ。
「アランくぅん……もうあんたたち結婚しちゃいなよぉ〜？」
親父の隣の席には、べろんべろんに酔い潰れたシトラスさんの姿があった。何やらあることないこと呂律の回らない舌をフルに使って発言し続けている。
「……何杯飲んだらこうなるんだよ」
この人は相当酒に強いはず。以前缶ビール17.5本を開けたときでさえ、そりゃあ酔ってはいたが、冷静な判断力は残っていた。でも、これは、もう……。
「俺が来たときにはもう既にビール10杯に赤ワインと白ワインを5杯ずつ、おまけにウィスキーまで飲んでいたみたいだからねぇ……」
マスターに頼んで注文票を見せてもらうと、それはそれは尋常じゃない量の酒を頼んでいたことがわかった。親父が言及したものの倍はある。
「この量は……普通……死ぬだろ……」
絶句するしかなかった。それでもシトラスさんは陽気に喋り続けている。肝臓どうなっているんだこの人。
「それでアラン。まだシトラスさんがこんなに酔う前に、お前に伝言を預かったんだ。シトラスさんが酔って伝えるのを忘れたらいけないからって」
親父はシトラスさんに絡まれながらも、しっかりと俺に伝言を伝えてくれた。親父自身は伝言の内容が理解できないようで、ある程度理解できた俺を見て不思議な顔をしていた。
「俺もしっかり理解できたわけじゃないが、だいたい検討はつく。一つ確かなことは、また俺が別の場所に呼び出されたってことだ」
親父は俺が今すぐそこに行きたそうにしているのを察して、うなずいてくれた。
「行ってこい。シトラスさんは俺がしっかり見ているから、大丈夫だ」
なかなか頼もしいセリフじゃないかと、不本意ながら感心した。それでも悩みの種が一つ。
「これ、支払いはどうするんだ？」
信じられないくらいの量の酒を頼んでいるシトラスさん。こんな状態じゃシトラスさんが支払うことは難しいだろう。果たして親父の持ち金は足りるだろうか。
そんな心配をよそに、親父は微笑んだ。
「シトラスさんは賢いよ」
親父はカウンターの上に置かれた封筒を指差した。その封筒の右下に、小さく美しい字で『酒代』と書かれているのが目に入った。親父の筆跡ではない。
俺は苦笑して、二人を残してバーを出た。まったくシトラスさんも抜かりのない人だ。
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名稀ーなきー(プロフ) - 最後まで読ませていただきました！最高です(><) (2023年1月21日 22時) (
レス) @page50 id: abcac44663 (このIDを非表示/違反報告)
頂志桜(サム)(プロフ) - マナさん» こんばんは！大変返信遅れてしまい申し訳ありません。質問大丈夫ですよ！どのようなことでしょうか？ (2021年6月19日 23時) (レス) id: fb3c4754d3 (このIDを非表示/違反報告)
マナ - 頂志桜(サム)さん» こんばんは…！質問していいですか？ (2021年6月17日 20時) (レス) id: 080dd1eb98 (このIDを非表示/違反報告)
頂志桜(サム)(プロフ) - ミラさん» こちらこそ、最後まで読んでくださってありがとうございます！面白いと言っていただけて、うれしい限りです。ここまで辿り着けたのは皆様のおかげです。本当に、ありがとうございました！ (2020年2月14日 21時) (レス) id: b07a161332 (このIDを非表示/違反報告)
ミラ(プロフ) - 四年間、お疲れ様でした！面白いストーリーをありがとうございました！ (2020年2月14日 21時) (レス) id: 741f87e9ae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：頂志桜 | 作成日時：2020年2月1日 8時
