正式に ページ29
【A視点】
目を覚ましてから、いろいろなことを聞いた。ラコイさんが目覚めたこと。パキラさんとキリナお姉ちゃんが出頭したこと。サトシがカントーに帰る予定だということ。私のことで取材陣が殺到していること。アランが自分の夢を叶えるためにカロス芸術大学の音楽学部の編入試験を受けようとしていること。
セレナさんが、ミアレでパフォーマンス大会を開こうとしていて、私にオファーをしたかったと言ってくれたこと。
本当は出たかった。けれど、心のブレーキがかかる。考え出すと落ち込んでしまうから、考えないようにした。
「それで……A。俺は、お前に言わなければならないことがある」
そこに、アランの緊張した声が飛び込んできた。急にどうしたかと思い、首を傾げる。
彼は椅子から腰を浮かしたかと思いきや、床にひざまずいた。彼の目と私の目が同じ高さになる。
「俺と……付き合ってください」
彼は頬を紅潮させながら、まっすぐ私を見て手を差し出した。私は混乱して、彼の手をそっと下げさせた。
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってよアラン。本気なの? よく考えてよ」
彼は私の言った意味がわからないような顔をしていた。予想外の反応のようで、ぴたりと動きを止めている。仕方ない。説明しなければ。
「あの……私、人間じゃないんですよ? 人工的に生み出された存在だし、おとうさんだってもういないし……すごく特殊な存在なんですよ?」
彼は我に返って考えるかと思った。しかし現実は違った。
彼は笑い出したのだ。
「なんだ、そんなことか。嫌われたかと思ってヒヤヒヤしたんだぞ」
「いや……嫌いなわけないですよ。でも、こんな特殊なのに……どうして……?」
今度は私が困惑で動きを止める番だった。
彼は私の手をそっと握って、爽やかにこう言った。
「約束、だろ?」
その瞬間、私の身体中に風が吹き抜けていくような感覚がした。
アランにとっては、私が人間であろうとなかろうと、特殊な存在であろうが何だろうが、関係ないんだ。彼は純粋に私を愛してくれていて、何よりも約束を……リーグが終わったら恋人になるという約束を果たしたいと思ってくれている。約束してしまったから仕方なくではない。今でも本気で、私のことを好きでいてくれている。
私は彼の手を握り返した。彼にはすべて伝わっているはず。だけど、ちゃんと言葉にした。
「はい……私でよければ……こちらこそ!」
私たちはこの瞬間、ようやく正式に恋人になった。
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名稀ーなきー(プロフ) - 最後まで読ませていただきました!最高です(><) (2023年1月21日 22時) (レス) @page50 id: abcac44663 (このIDを非表示/違反報告)
頂志桜(サム)(プロフ) - マナさん» こんばんは!大変返信遅れてしまい申し訳ありません。質問大丈夫ですよ!どのようなことでしょうか? (2021年6月19日 23時) (レス) id: fb3c4754d3 (このIDを非表示/違反報告)
マナ - 頂志桜(サム)さん» こんばんは…!質問していいですか? (2021年6月17日 20時) (レス) id: 080dd1eb98 (このIDを非表示/違反報告)
頂志桜(サム)(プロフ) - ミラさん» こちらこそ、最後まで読んでくださってありがとうございます!面白いと言っていただけて、うれしい限りです。ここまで辿り着けたのは皆様のおかげです。本当に、ありがとうございました! (2020年2月14日 21時) (レス) id: b07a161332 (このIDを非表示/違反報告)
ミラ(プロフ) - 四年間、お疲れ様でした!面白いストーリーをありがとうございました! (2020年2月14日 21時) (レス) id: 741f87e9ae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:頂志桜 | 作成日時:2020年2月1日 8時