ごめんね ページ11
【A視点】
痛い。痛い。心臓の鼓動と共に自分の命がすり減っていく。手足は凍え、息は浅くなり、意識はもうろうとしてくる。
時があるべきように進もうとするごとに、私の存在と摩擦して止まる。これはその痛みだ。
それでも、私は生きなきゃ。生きて、彼に伝えなければ。
ぼやける視界の中で、アランの動揺した顔が見えた。彼の腕の中にはハリマロンが眠っている。それだけで、こんな状態でも安心できた。
「バカなことを言うんじゃない! 待ってろ、すぐに助け出すからな!」
自分でも何を言ったか覚えていないが、彼に怒られた。彼はサトシと協力して私の体を水晶から引き離そうとしてくれているけれど、到底無理なことは、私自身が知っていた。
「無理だよ……それより早く……みんな……ここを出て……。早く……ハリさんを……マノンちゃんに……私が……力尽きる前に……!」
水晶は私の腹部にまで這い上がってきた。そろそろ、本当に時間がない。
「ハリマロンを届けて、お前のその役目は終わるんだったら……わかった。俺たちはここを出る。だが必ずすぐに戻ってくる。それまでは耐えてくれ!」
「……うん」
ごめんねアラン。私、今、嘘をついた。
アランとサトシは、リザードンに抱えられてここを出た。ツドキも心配そうな顔を向けながら飛び立った。ごめんね、みんな。
みんなに心配かけちゃった。でも、みんなを巻き込むわけにはいかないの。
水晶は私の胸を覆い尽くし、首へ、顔へ、侵略してくる。もうタイムリミットかな。
――ごめんね。もう、駄目みたい
最後にアランに思考を飛ばした。私の体が水晶に乗っ取られる。
時が再び動き出す音が聞こえた。それが最後だった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【アラン視点】
――ごめんね。もう、駄目みたい
聞こえた声に身が震えた。俺たちはもう外に出てしまった。戻ろうにも、どうにもできない。
時が動き出した。みんなに動きが戻る。蔦の動きは止まったままだ。
マノンたちに襲いかかろうとしていた蔦が寸前で動きを止めていた。Aはこれを視たのか。
マノンにハリマロンを返し、みんなに状況を説明した。脳内に聞こえた彼女の声については言わなかった。まだ、彼女は耐えていてくれていると信じている。
俺はリザードンとツドキと共に巨石の中に戻ろうとした。しかし、それはできなかった。
光を失っていた巨石が、再び赤く輝き出した。そして俺たちの侵入を阻むように動き出したのだ。
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名稀ーなきー(プロフ) - 最後まで読ませていただきました!最高です(><) (2023年1月21日 22時) (レス) @page50 id: abcac44663 (このIDを非表示/違反報告)
頂志桜(サム)(プロフ) - マナさん» こんばんは!大変返信遅れてしまい申し訳ありません。質問大丈夫ですよ!どのようなことでしょうか? (2021年6月19日 23時) (レス) id: fb3c4754d3 (このIDを非表示/違反報告)
マナ - 頂志桜(サム)さん» こんばんは…!質問していいですか? (2021年6月17日 20時) (レス) id: 080dd1eb98 (このIDを非表示/違反報告)
頂志桜(サム)(プロフ) - ミラさん» こちらこそ、最後まで読んでくださってありがとうございます!面白いと言っていただけて、うれしい限りです。ここまで辿り着けたのは皆様のおかげです。本当に、ありがとうございました! (2020年2月14日 21時) (レス) id: b07a161332 (このIDを非表示/違反報告)
ミラ(プロフ) - 四年間、お疲れ様でした!面白いストーリーをありがとうございました! (2020年2月14日 21時) (レス) id: 741f87e9ae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:頂志桜 | 作成日時:2020年2月1日 8時