佰肆拾伍 ページ45
「無惨さん」
もう一度名前を呼ぶ。
今度は顔を上げてしっかりと見つめる。
無惨さんの目が大きく見開かれ固まっている。
「無惨さんっ、会いたかったです。ずっとずっと会いたかったです」
蘇る記憶。
ある方が言った。
記憶を消す事は神の優しさなのだと。
思い出せばその人生も過去に囚われてしまうから。
でも、私はそんな神の優しさは要らない。
「無惨さんっ」
また名前を呼べば、無惨さんに抱き上げられる。
「……私を、思い出したのか」
「はい!」
笑えば、無惨さんはとてつもない力で私を抱き締める。
「……遅い……思い出すのが遅すぎる。もう五年も待った」
「五年…!?」
無惨さんは私をゆっくり離して、手を繋いで歩き出す。
「言っただろう。私はお前のものだと」
「……はい」
「それを忠実に三十一年間守ってきた」
「えっ……」
無惨さん、三十一歳なの?
相変わらずカッコイイ。
「そんなに見つめるな、我慢できなくなる」
「ご…ごめんなさい……」
「それで?Aは忠実に十六年間私との守ってきたか?」
「年齢いこーる彼氏いない歴です!!」
そう言えば、無惨さんはフッと笑う。
「時代が変わって、様々な言葉が増えたとしても根本的なものは変わらないのだな」
「え……?」
「Aのことが変わらず愛おしいという事だ」
優しく頭を撫でられて、顔が熱くなる。
「む、無惨さんっ、私あの、今十六で…けっ、結婚できる歳です!!」
そう言えば、無惨さんはポカンと口を開けた後、笑いだした。
「ふ、ははっ、結婚、確かに結婚できる歳だな。A」
「はい…!私、無惨さんのものですから!一生無惨さんのものです!!」
過去の自分を取り戻し、スラスラと言葉が出てくる。
無惨さんは目を見開いた後、眉を下げた。
「はぁ…全くA、お前は本当に変わらないな……」
「だって約束もしましたよね。生まれ変わってもまた無惨さんを…って」
ギュッと手に力を込めると、無惨さんはポツリといった。
「すまなかった」
「……何がですか」
「過去の事だ」
「過去の事は過去の事です。今はもう気にしません」
無惨さんはその後家まで送ってくれた。
『A、もし…全ての罪を償い、生まれ変わる事が出来たら……私をまた愛してくれないだろうか』
もちろんです、
無惨さん。
私はずっとあなたを愛していますから。
806人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
丸(プロフ) - へなさん» へな様…!今更だなんて!そんなそんな!素敵すぎるというお優しいお言葉…!拙い文にも関わらずそう言っていただけて本当に胸いっぱいです(*´-`*)長い物語でしたが、最後まで読んでいただきありがとうございました! (3月25日 1時) (レス) id: fe9b371b01 (このIDを非表示/違反報告)
へな - 今更ですが素敵すぎました! (3月24日 8時) (レス) @page50 id: 6adab414b4 (このIDを非表示/違反報告)
丸(プロフ) - ふわるさん» ふわる様、返信が遅くなってしまい申し訳ございません…!!そう言っていただけて光栄です〜!!(;▽;)そんなに褒めていただけてもう心中、喜びパラダイス状態です!!私も素敵な読者さまからコメントしていただけて幸せです〜!!ありがとうございます!! (8月26日 14時) (レス) id: fa76bf1609 (このIDを非表示/違反報告)
ふわる(プロフ) - 面白かったです!泣きました笑!なんでこんな良い作品が思いつくんですか!!!この作品に出会えてよかったです! (8月24日 1時) (レス) @page50 id: ca3f3ad930 (このIDを非表示/違反報告)
古猫丸(プロフ) - あやめさん» あやめ様!そんなに褒めてくださるなんて…!ありがとうございます〜!!m(_ _)m無惨様をさらに好きになるきっかけを作る事ができて感無量です。゚(゚´Д`゚)゚。あやめ様の褒め褒め言葉に私はHPが急激に回復いたしました!!素敵なコメントありがとうございました!! (2021年2月3日 19時) (レス) id: c92cfbb025 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ