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43話 ページ43

「すまなかった…」




血眼になって探した、


神に頼ってまで安全を祈った、






長すぎる一夜の中でやっと見つけた血だらけの妹を抱きしめて出てきた言葉はそれだった。







「この状況で、Aの側にいなければならなかったのは不死川でも悲鳴嶼さんでもない。兄である俺だ。」






視界が突然真っ暗になって混乱しただろう。


時透達が死んで取り乱しただろう。






そんな時、側で支えてやるのが兄の務めのはずなのに。








「あ、う…」





あの時帰れなどと言わず、共に稽古をしていたら守ってやれただろうか。



突き放さず側にいることが正しかったのだろうか。









そうすればこんな、こんな…







「俺はお前に酷いことを言った。」




自覚している。


わかった上で突き放した、混乱することから逃げるために妹の想いを犠牲にした。









「俺は…お前が水柱に相応しいと思った。そうなって欲しかった」






選別を突破していない俺より、剣技の才もあって、水の呼吸に適したお前が水柱になるべきだった。




いち鬼殺隊員として、今でもそう思っている。









「でも…Aに怪我をして欲しく無かったんだ。生きてて、欲しい。」




狭霧山に何度も足を運んだ。



扉を開けばすぐ会えるところまで何度も行った。






でもその扉を開ける事はなかった。







俺の話を聞いて目を輝かすお前に不安ばかり募るのが嫌だったんだ。




会ってしまえば離れ難いから嫌だったんだ。



任務など放棄して、隣にいてやりたいと思ってしまうから嫌だったんだ。









「うぁ…お兄ちゃん、ごめんなさい…っ、わたし…わたし…ごめん、なさい…っ」






お前が生きてくれさえいれば良いんだ。




元気に育ってくれれば、俺はそれで良かった。









Aさえいれば、









「よく、堪えた。」




盲目になっても、これだけ怪我をしても、15歳という若さでよくここまで堪えた。




昔よりずっと大きい肩を抱いて、自分がどれだけ妹の成長を見過ごしたのか痛感した。











「伊之助が持ってきた目で俺の視界を共有する、良いな」




俺もきっとまともに動けない、役に立つかは分からない。




でも死ぬに死に切れないだろう、まだ死ねないだろう。









「俺は常にお前の対角線上に立つ、常に目で捉えておくからそれで動け。できるな」



「…うん、できる。」





毒を喰らっても、腕を失っても、打ちのめされても、守りたいものがある。








「判断が早いな」






小さく笑ってその頭を撫でたら、心底嬉しそうに目を細めていた。




その一瞬だけ、こんな残酷な夜を忘れる事が出来た。

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柊蓮(プロフ) - 毎年、誕生日に読んで号泣してます…大好きです。この作品も、同じ作者様の作品も。ついに夢主ちゃんとおんなじ16歳になりました…来年もまた読みに来ますっ素敵な作品を本当にありがとうございます。 (2月9日 1時) (レス) @page50 id: 4d2be51c25 (このIDを非表示/違反報告)
芽依 - ボロ泣きです、、最高です、後日談までもう泣けてくるんですが、、すれ違う兄妹の書き方が神ってますね、素敵な作品を読ませていただきありがとうございました、、! (1月30日 10時) (レス) @page50 id: e9435a06b7 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 涙止まりませんでした、、、出会えて良かったです、、、 (11月24日 13時) (レス) @page50 id: 477ea6ec3d (このIDを非表示/違反報告)
ピンス - 流石に泣きました。後日談も最高です。神作品ありがとうございます… (11月10日 23時) (レス) @page50 id: 18a9383861 (このIDを非表示/違反報告)
てんごく(プロフ) - めっちゃ泣きました。凄い良いお話です (10月5日 18時) (レス) @page50 id: e622d65d6b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:だむい | 作成日時:2020年7月26日 20時

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