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『……“結婚式”、かぁ…。』

お昼寝の時間。

いつも通り、おそ松様を寝かしつけた後、

小さくため息を吐きながら、
私は縁側に座り込んだ。

…まさか、この歳で
結婚を迎えるとは思わなかったなぁ…。

男性経験がほとんど無かった私にとっては、
人生最大の出来事だ。

両親にこの事を話せば、

きっと泣いて大喜びするだろう。

「相手は、“神様”」だなんて、

口が裂けても言えないけど。

…でも、私
花嫁さんになれるんだ。

こう見えて、少し憧れてたんだよなぁー。

綺麗におめかしして、
皆に「おめでとう」って言われて。

好きな人と、一緒になれる。

『……んふふー…、

って、何笑ってんだ私。』

…でも、神様に嫁入りするって
そんな簡単に出来るのだろうか。

私、人間だし。

そもそも、神様のお嫁さんって
何をすれば良いんだろう。

人間の普段の夫婦生活と変わらないのかな。

お掃除して、
ご飯作って、
お洗濯して、

彼のお世話をして……って、

これじゃ今までの生活と何も変わらないか。

…そして、

いつか、あの人との子供が出来て、

家庭を持って、

幸せな老後を送る……。

…ん？

『ぇ、ちょっと待て。

……“子供”…ッ！？』

いやいやいや、

何考えてんだ私…！？

こ、“子供”って…、

『……ッ。』

みるみるうちに、顔が熱くなる。

む、無理だ…。

あの人に、触れられるだけでも緊張するっていうのに…っ。

『……うぅ…ッ。』

熱い顔を隠し、
私は小さく蹲った。

「みゃあ。」

突如、鼓膜に響く劈くような鳴き声。

『…ッ、へ…？』

思わず私は、隠していた顔を上げる。

いつの間に居たのか、

私の隣に、

1匹の黒猫が座っていた。

様子を伺うような鋭い目。
微動だに動かない。

唯一、ゆらゆらと揺れる
黒い尻尾は、

何故か2本存在していた。