おかえり。 (ページ22)

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「悪いね、銀行まで付き合ってもらって」

「いや、平気っす、暇だったんで」

「渡辺くんは友達とかとご飯行かないの？」

「んやぁ … 行かないっすね」

「あー、そうなんだ」

朝、いつも通り娘の朝ご飯とお昼ご飯を作り

出勤しようとした矢先

机の上に置いてある家賃、ガス代、電気代、水道代

の振込用紙があるのが見える

そういえば、ずっと忘れていた

今からコンビニに行くから払えばいいものの

この時間、ただでさえOLやサラリーマンや学生で

賑わってるのに、こんなに持って行ってちゃ流石に迷惑だ

と言っても俺は銀行の場所なんか知らない。

前までは別の地域に住んでいたし

支払いなんて全部コンビニだったし

残高も今は携帯で見れる時代だから

銀行に行く必要なんてなかった気がする

携帯に入っている地図アプリを開いて

その地図にそって歩くが、元々の方向音痴が発揮して

変な路地裏に付いてしまった

左の方にはビルやマンション、沢山の車が通ってる大通り

右の方は雑居ビルが立ち並び、閉店している店が多い商店街ばかり

このマップでは右方向と指しているが

正直そんな気がしない

「阿部さん？」

携帯と睨めっこをしながら立ち止まってる俺の後ろに立つ彼

いきなり話し掛けられたから驚いて肩をビクつかせて

直ぐに後ろを向くが、ポカンとしていて寝癖が着いてる彼が立っていた

「阿部さんがまさか銀行の場所知らないなんて」

「悪かったね、銀行に行かなきゃダメな時は全部

母さんに任せて仕事に行ってたから、ずっと分かんなかった」

「ふーん」

いつもとは違うシャンプーの香り

ボディソープも違う

いや、何でここまで知ってるんだろ、俺

気持ち悪過ぎる。

隣でポケットに手を入れながら歩く彼をチラチラと

見ながら歩いていると

目の前にあった看板に気づかず頭を勢い良くぶつけた

「い゛っ … ！」

「え、うわっ、大丈夫ですか！？」

「ごめんごめん、うっかりしてた」

「阿部さん珍し、家で寝た方がいいんじゃないですか」

「急ぎの仕事あるから、大丈夫だよ」

「 ……… 」

額を抑えながら愛想笑いする俺を見て

彼は顔を曇らせる

何かしたかな

なんて思いながら彼の名前を呼ぼうとすると

「頑張り過ぎです、少し休みましょ」

と、俺の頭に手を置いて言う

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