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いつもなら前を見て歩いて
障害物になんてぶつかる事の無い阿部なのに
今日はいつにも増してボーっとしていて
思いっきり頭をぶつけたと思えば
「 急ぎの仕事 」
なんて言うから、心配になる
直接家まで送り届ける事は
俺自身が家を知らないから出来なかったが
阿部の代わりに俺が今日出勤する事になった。
「 … 」
「 ふっかさん早く急いで下さい！！ 」
もうすぐお昼の鐘が鳴る時間
店内でお弁当を真剣に選ぶおじさんをじっと見ながら
時が進んで行くのを感じていると
聞き覚えのある声と共に二人の男が店内に走って入店してきた
「 ちょ、もうこのパンでええよな！？ 」
「 良い良い！！早くレジ！！ 」
レジの目の前にあるパンコーナー
スーツを着た男達は適当にパンを掴んでレジへとまた走って持ってくる
そんな二人の中の一人と目が合えば
「 あれ！今日休みじゃなかったの！？ 」
と、声を掛けてくる
あぁ、彼だ。
「 急に入るこ .. 「 ふっかさん先行ってんで！ 」
隣にいた男は小銭を出して走って店から出ていく
どこかで聞いた。
絶対に、この声は聞いたはずだ。
「 あ、ごめん俺も急ぐわ！これで丁度だから！
今日家来てね！また！ 」
彼も同一に小銭を出して走っていく
走る背中を見詰めながら口を尖らせる俺
休日なのに忙しいんだな。
と、思う
しばらく彼が去った後の駐車場を見ていると
既にどこかに行ったであろうと思っていた彼が戻り
口パクで
「 だいすき 」
と言い、微笑んでまた走ってどこかへと行ってしまった
急いでる時くらい、いいのに。
なんて思うけど、内心嬉しくて仕方がない
「 あ、あの ー … 」
「 あ、すみません！お預かりします 」
前にいたお客に気づかなかった俺は急いで商品を手に取り
スキャンし始めた。
帰ったら絶対イチャついてやろう。
絶対。
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作者名：渚 | 作成日時：2022年4月29日 21時
