好き〜２５〜 ページ25
「一言で言えば･･･放っとけ」
『え、』
「うん、放っとくのが一番。はい解決」
『いやいやいや、』
何も解決してないですけど！？
放っておくのが一番悪いのでは･･･？
「こういうのはね、変に首突っ込むと更にこじれるから」
『でも････』
「それに潤くんはともかく、翔くんは大人だからすぐ元に戻るよ」
『･･･そう、でしょうか』
「一年間担任してた俺が言うんだから間違いない」
『え？去年櫻井先輩の担任だったんですか？』
「そ。あの時の翔くんは可愛かったなぁ」
今は男らしいでしょ、って笑う。
確かに、今は可愛いよりもかっこいい。
や、可愛いところもあるんだけど。
どっちかというとかっこいいなって思う時が多い。
「だからAちゃんが気にすることないよ」
『わ、分かりました』
「うん、良い子」
まるでペットかのように頭を撫でてくる先生の手を払う。
ちょっと雑なの止めてほしい。
『それじゃ行きますね。ありがとうございました』
「んー、また明日ねー」
先生に手を振って扉を開けた時だった。
「うおっ！？」
『わっ、』
開ける瞬間が同時だったのかぶつかりかける。
思わず仰け反ると、頭上から「すみません」と焦った声が聞こえた。
･･･見たことない人だな。髪が赤。
制服もうちのじゃないし、中学生っぽい･･･？
「あの、怪我とかしてませんか？」
『あ、ああ、大丈夫。こっちこそごめんね』
「いえ、俺が急に開けたから･･･」
「ドアの前で何やってんのー？」
不思議に思ったのか、大野先生が声をかけてきた。
私が返事するより先に男の子がぱっと顔を上げる。
「大野先生！」
「んん？あれ？」
先生がじっとその子を見てから首を傾げた。
「何でここにいんの？」
「酷いなぁ。先生に会いに来たに決まってるでしょう」
「まさか！君、わざわざここまで来るほど俺のこと好きじゃないでしょ」
「そんなことないですって！」
「本当は？」
「翔くんに会いに来ました！」
「うん、素直でよろしい」
美術室に二人の笑い声が響く。
････うん？知り合い？
しかも櫻井先輩のことも知ってるの？
余計に誰なのか気になるけど･･･。
『(ついさっき潤くんから「一緒に帰ろう」ってラインが来たし･･･また今度でいいか)』
私は慌てて階段を駆け下りていった。
「･････あの人って、」
その男の子が私をじっと見ていたとは知らずに。
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作者名：みかづち
| 作成日時：2020年9月2日 15時
