188、仲直り ページ9
「…Aちゃん…どうして…」
「もうやめよ…?ね?お願い…」
「A!!」
小湊先輩が男を突き飛ばす。
なんスか、大袈裟ッスね、刺さってないッスよ。
胸の前で強く握られたうちの両手には、小湊先輩に向けられたナイフの刃がしっかり握られていた。
「馬鹿!お前…っ」
「平気ッスよ」
「いいから、ゆっくりナイフ離せ」
小湊先輩にナイフを渡して、座り込んだ男の前に両膝をつく。
手、震えてたッスね。
本当はアンタも怖かったんスよね。
「意地悪な事言って、ごめんね」
狂気が消えて今はただ怯えているだけの相手の瞳を真っ直ぐ見つめる。
後ろで血塗れのナイフを持ってユラユラ揺れている小湊先輩が若干気になるけど、うちはニコッと笑いかけた。
「仲直りしよ!これからはちゃんと友達として、仲良くしよ?」
「…ごめん…ごめんなさい…」
泣いて謝る男をヘラヘラ笑って見ていると、後ろから腕を掴まれ引っ張られた。
「A」
「えへへ、怪我しちゃったー、血塗れだ!」
「うるさい馬鹿」
「わー!!!待って待って!!!それはダメ!うち死んじゃう!!!」
バッとナイフを振り上げた小湊先輩を見て慌てて立ち上がると、その体をぎゅっと強く抱き締められた。
「小湊先輩…?服に血が付いちゃう…」
「うるさいって言ってんの、分からない?」
「あ、はい。黙ります」
アドレナリンが出まくってるからか、不思議と痛みは感じない。
じっと動かない小湊先輩に困って、野球部の皆に助けを求める視線を送ると、何故か皆は呆れたように笑っていた。
「お前がAを傷付けたこと、コイツが許しても俺は絶対許さないからね」
「はい…」
「次はないと思いなよ」
「小湊先輩、うちの事はもういいッスから!帰って皆でご飯食べよ!」
ようやくうちを離してくれた小湊先輩の顔は、これ以上ないってくらい安心した顔だった。
うちのために、この男ぶん殴らないでいてくれた事、ちゃんと分かってるッスよ。
うち、小湊先輩のそういうところが、大好きッスから。
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橋姫(プロフ) - リンさん» リンさん感想ありがとうございます!楽しんでいただけて嬉しいです(o^^o)今後も楽しんでいただけるよう頑張りますのでよろしくお願いします!^^ (2016年9月16日 17時) (レス) id: 8eb81026be (このIDを非表示/違反報告)
リン - めっちゃ面白かったです。ありがとうございました。 (2016年9月15日 6時) (レス) id: 7578393967 (このIDを非表示/違反報告)
橋姫(プロフ) - 春介さん» 春介さんコメントありがとうございます!私には勿体無いお言葉(´;ω;`)嬉しいです!今後も是非よろしくお願いします^^ (2016年6月18日 20時) (レス) id: 8eb81026be (このIDを非表示/違反報告)
春介 - もう格好良さの塊と可愛さの塊ですね。主人公が可愛いらしいです。最初から読む価値ありますよ。ヘ(≧▽≦ヘ)♪ (2016年6月18日 20時) (レス) id: 48065eba43 (このIDを非表示/違反報告)
ヴァン - 遅くなってすみません!本当ですか!?続編とても楽しみにしてました!言葉で表せないくらい、めっちゃ嬉しいし、この小説大好きです!頑張って更新してください!!! (2016年2月15日 20時) (レス) id: a98225ac2b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:橋姫 | 作者ホームページ:http://yumenoukihashi.himegimi.jp/
作成日時:2015年11月29日 20時